月別アーカイブ: 2021年10月

『インカの末裔と暮らす』

関野吉晴『インカの末裔と暮らす:アンデス・ケロ村物語』(文英堂 2003)を読む。
著者の関野氏は、1993年に人類の軌跡を辿る旅を南米最南端パタゴニアから始め、2002年無事にゴールのタンザニア・ラエトリに到着した冒険家でもある。

本書ではインカ帝国の末裔とも称される旧都のクスコから車で6、7時間、徒歩で2日間かかる場所にあるケロ村での人々の暮らしが写真入りで紹介されている。著者は15年間で12回もケロ村を訪れており、アンデス山脈の3000mの標高差を利用して、牧草地と農耕地を使い分け、多種多様な生態系を利用する自給自足の生活の知恵について丁寧に説明している。

高地のよく似たアルパカとリャマの違いだが、著者には容易に見分けがつくという。しかし、中にはどうしても区別のつかないものがおり、聞いてみたところ、リャマとアルパカの混血だという。馬とロバの混血のラバのように、それぞれの長所を合わせ持つ動物になるそうだ。何か冗談のような話だ。

「トルコ大統領 欧米など10大使追放指示」

本日の東京新聞朝刊に、何かと騒がしいトルコのエルドアン大統領に関する記事が掲載されていた。トルコは対ロシアとの地政学上、英米仏を中心とするNATO(北大西洋条約機構)に参加してきた。トルコとロシアはクリミア戦争以降ずっと不仲が続いている。また、米国にとってもトルコに米軍基地(インジルリク空軍基地)を堂々と展開することができ、中東に睨みを効かせることができる。

2003年にエルドアン氏がトルコ首相に就任した頃は、イスラム教国のトルコがキリスト教をベースにした欧州連合(EU)へ加盟する話も実現間近だと思われていた。しかし、2014年に大統領に就任して以降は、首相職を廃止して権力を集中し、報道への規制も強化している。今年の8月にはアフガニスタン難民の受け入れをめぐってEUとの対立が激化している。既にトルコ国内には数十万人のアフガニスタン難民が流入しているとされ、国内各地で難民と住民との衝突が生じている。

エルドアン大統領の心中を察するに、民主主義を標榜するNATO陣営やEUが、トルコに移民・難民を巡る問題を押し付けていると感じているのであろう。一方、トルコがNATOを脱退したからといって、すぐさまロシアや中国に与するとも思えない。ではエルドアン大統領はどこへ向かおうとしているのか。誰か説明してくれ!

とうとう秋葉原まで

真ん中の子と自宅から秋葉原まで自転車で往復した。
リアル弱虫ペダルではないかと、ツッコミながらも、心地良い運動を楽しんだ。
スマホの電源が切れたので、写真はない。

「G7、強制労働排除で一致」

本日の東京新聞朝刊に、中国の新疆ウイグル自治区での綿花畑や綿製品工場での強制労働を巡って、先進7カ国が貿易で圧力をかけていくことで一致したとの記事が掲載されていた。

地理の先生っぽい話をすると、綿花は乾燥地帯で雨季と乾季がはっきりしている地域で栽培されている。一年中雨が降る日本ではほとんど栽培されていない。内陸地域ほど降水量が少なく、気温の年較差も大きいため、雨季と乾季が明瞭になる。生産量世界第1位はインドである。内陸のデカン高原は年降水量は800ミリメートル以下で、夙に綿花の一大産地として知られる。
中国の内陸に位置する新疆ウイグル自治区は年間降雨は100~500ミリで、中国の綿花栽培の9割を占めている。

閑話休題。米国バイデン大統領は、看板政策の人権を錦の御旗に、トランプ前大統領の外交政策をそのまま継承している。トランプ前大統領はツイッターで、米国の知的財産が中国にだだ漏れであると指摘していたが、バイデン大統領になって、その批判の材料が知的財産権から人権に変わっただけである。

それにしても、中国のイスラム教徒への弾圧は目に余るところがある。ウイグル語の使用禁止やイスラム教の否定、北京標準時の使用など、およそ民主主義国とは言い難い、常軌を逸した政策が報じられている。バイデン大統領も習近平国家主席も同じ穴の狢(むじな)という気がする。

「中国 対印領土問題に布石」

本日の東京新聞朝刊に、ブータン西部の中印国境未確定地域に中国が乗り出すとの記事が掲載されていた。地図帳で確認すると、チベット自治区とミャンマー、インド、ブータンに囲まれた山地である。こうした中国の領土拡大は、中国習近平政権が進める「一帯一路経済圏」戦略の一環である。今後の市場拡大が見込まれるアフリカとの貿易体制を確保するため、中国はインド洋へのアクセスを強化している。ミャンマーやアフガニスタンへの介入と同様に、中国のインドへの圧力という視点で捉えておきたい。