『インカの末裔と暮らす』

関野吉晴『インカの末裔と暮らす:アンデス・ケロ村物語』(文英堂 2003)を読む。
著者の関野氏は、1993年に人類の軌跡を辿る旅を南米最南端パタゴニアから始め、2002年無事にゴールのタンザニア・ラエトリに到着した冒険家でもある。

本書ではインカ帝国の末裔とも称される旧都のクスコから車で6、7時間、徒歩で2日間かかる場所にあるケロ村での人々の暮らしが写真入りで紹介されている。著者は15年間で12回もケロ村を訪れており、アンデス山脈の3000mの標高差を利用して、牧草地と農耕地を使い分け、多種多様な生態系を利用する自給自足の生活の知恵について丁寧に説明している。

高地のよく似たアルパカとリャマの違いだが、著者には容易に見分けがつくという。しかし、中にはどうしても区別のつかないものがおり、聞いてみたところ、リャマとアルパカの混血だという。馬とロバの混血のラバのように、それぞれの長所を合わせ持つ動物になるそうだ。何か冗談のような話だ。