第153回芥川龍之介賞受賞作、又吉直樹『火花』(文藝春秋 2015)を読む。
2015年2月号の「文學界」に掲載された作品で、純文学の権化たる文芸誌が増刷されて話題を呼んだことでも記憶に新しい。累計発行部数は単行本、文庫本合わせて300万部に近い数となっている。
テレビの視聴者や舞台の観客が笑うか笑わないだけで評価が下される、究極的な大衆演芸である漫才に生活の全てを掛けようとする若者の青春劇となっている。ややテーマが掴みづらいが、他人が面白いと感じるのか否かという勝手で単純な基準だけで人生を左右される芸人の世界に、自分の笑いや理想的な芸人像を追い求めようとして挫折をしてしまう主人公のセリフや生き様が印象に残った。
日別アーカイブ: 2018年1月7日
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
上の子と一緒に、佐藤健・土屋太鳳主演、瀬々敬久『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(2017 松竹)を観に行った。
どうせ『余命1ヶ月の花嫁』(2009 東宝)と同じ流れだろう、娘が見たいというのだから得点を稼いでおこう、といった気持ちで映画館の席に座った。
前半は、「もう少し二人の恋愛の場面で尺を使ったほうがいいのに」とか、「発病の流れがいかにもテレビドラマ風でいただけないなあ」とか批判的に見ていたのに、後半に入ってからは一転、主演の佐藤健さんと土屋太鳳さんの演技にめりめりと引き込まれていった。久しぶりに俳優の目線や表情に魅せられた映画であった。テレビドラマを全くといっていいほど見ないので、最後のエンドロールのところで主演の俳優の名前を知ったというのも良かったのかもしれない。
最後は幾度か涙が溢れてきたのだが、隣に座っている娘に見つからないように誤魔化すのに必死だった。娘と二人きりで映画館に行くというのは人生のほんの短い期間の幸福かもしれない。大事にしたい。