本日の東京新聞埼玉版の紙面より
「原発再稼働意見書」に反発 市民ら県議長に抗議文
県議会が十二月定例会で可決した原発の再稼働を求める意見書が、一部の市民から反発を買っている。十日には再稼働に反対する市民や団体が抗議文を議長宛てに提出。さいたま市内でデモ行進し、「撤回しろ」「勝手に決めるな」と声を上げた。 (井上峻輔)
意見書は、昨年十二月二十二日に自民などの賛成多数で可決された。エネルギーの安定供給や経済効率性向上には原発の稼働が欠かせないとして、国に対して「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を進めるよう強く要望する」としている。
この意見書に、反原発運動に取り組む市民らが反発。県平和運動センターが作成した抗議文が会員制交流サイト(SNS)などで広まり、県内外から三千百三十人、百四十一団体の賛同が集まった。賛同者には東京電力福島第一原発事故の避難者も含まれているという。
抗議文では「原発事故の収束が見通せない中で、このような意見書を可決することは被災地を無視したあまりにも無責任なものである」と指摘。「『世界で最も厳しい水準の規制』との『原発神話』はすでに崩壊している」などとして、意見書の撤回を求めている。
呼び掛け人で同センター副議長金子彰さんは県庁で会見し「県民からすると寝耳に水の話。電力消費地である埼玉県が、原発の立地県にリスクを全部押しつけて意見書を可決したことは許されない」と語った。
原発の立地県からも怒りの声が上がる。福島県郡山市議の蛇石郁子さんも十日、意見書の撤回を求める別の文書を提出。会見に同席し「再稼働はあり得ないこと。賛同者は『福島のことはひとごとなんですね』とあきれている」と訴えた。
議会事務局によると、意見書は既に衆議院議長や首相、経産相らに宛てて送られた。自民党県議団は、この時期に意見書を出した理由について「団体からの要望を受け、県議団としても出すべきだと判断した」としている。