第153回芥川龍之介賞受賞作、又吉直樹『火花』(文藝春秋 2015)を読む。
2015年2月号の「文學界」に掲載された作品で、純文学の権化たる文芸誌が増刷されて話題を呼んだことでも記憶に新しい。累計発行部数は単行本、文庫本合わせて300万部に近い数となっている。
テレビの視聴者や舞台の観客が笑うか笑わないだけで評価が下される、究極的な大衆演芸である漫才に生活の全てを掛けようとする若者の青春劇となっている。ややテーマが掴みづらいが、他人が面白いと感じるのか否かという勝手で単純な基準だけで人生を左右される芸人の世界に、自分の笑いや理想的な芸人像を追い求めようとして挫折をしてしまう主人公のセリフや生き様が印象に残った。