月別アーカイブ: 2014年7月

『超思考』

北野武『超思考』(幻冬舎 2011)を読む。
雑誌「パピルス」に2007年10月から2010年12月に連載されたコラムに加筆・訂正したものである。ちょうど民主党政権になった時期に重なっており、近年のマスコミや芸人、映画界のタブーを扱いながら、思考や品性を忘れた日本人を揶揄する内容となっている。マスコミの言説や世間の「常識」がいつの間にか刷り込まれ、金や安っぽい物に囲まれて安易な生き方を選択している人たちを嗤う。
本来「才能」や「個性」というのは、磨きに磨いてやっと手に入るか入らないかという類いの資質なのに、恰も誰しもが生まれつき持っているかのように、若者に媚びる時代を批判するくだりには溜飲が下がる思いがした。

自然地理学 第2課題

昨日のレポート結果を反省し、今度は科目の教科書をなぞりながら、具体例については新書を何冊か調べて書いた。

「海岸の管理」
 海岸の管理は複雑で困難なものである。海岸侵食の影響を軽減するために,広く様々な手段が講じられたにも関わらず,氾濫と崖崩れがほぼ定期的に繰り返され,地球温暖化による海水準の上昇の脅威が一層現実的な問題となってきており,新しい管理の方法に対する関心が高まってきている。海岸の管理の方法には構造的なものと非構造的なものがある。
 構造的方法には,波のエネルギーを吸収したり押し戻したりすることによって,崖の基部を保護する防波堤や護岸,消波ブロック,また,沿岸漂流の速度を減少させることによって,小石を捕捉し安定させる海岸突堤などがある。残念ながら東日本大震災ではこれらの防潮堤の効用に疑問が投げかけられている。
 非構造的方法には,浚渫や斜面をなだらかにすること,植生の回復による養浜,崖の安定化が挙げられる。
 日本では,東日本大震災を受け,「海岸法」を改正し,「津波,高潮等に対する防災・減災対策を推進」するための「減災機能を有する海岸保全施設」として,堤防や樹林の整備を進めている。近年,養浜は防災だけでなく,京都・天橋立の砂州や海水浴場の整備など観光客の誘致を目的として行われている。
 また,上記の積極的な管理方法に加え,海岸からの撤退や何もしないといった消極的な方向も模索されている。東日本大震災の津波被害を受けた沿岸地区では,集落全体で高台に移転するところもある。また,侵食や津波などは自然の摂理だから,あれこれ手を焼いても仕方がないという考え方も一部に根強い。

「北Africaの砂漠化現象への取り組み」
 北Africaの北緯15~35度の中緯度亜熱帯に広がるサハラ砂漠周辺地域で,1970年代中ごろから干魃が発生し,砂漠化が進行している。その原因として,雨季が短くなり年間降水量が減少した自然的原因と,作付け地の拡大や,過放牧,燃料の薪炭材を確保するための森林破壊といった人為的原因があげられる。
 北Africaでは,Foggaraと呼ばれる地下水路で農業用水を引き灌漑して農業を行っている地域もみられる。しかし,灌漑水には濃度1%ほどの塩類が含まれており,灌漑水を引けば引くほど地表に集積してしまう。たくさんの水を流して地表への集積を避けるベージン灌漑という農法もあるが,結局は下流の地下水の塩濃度を高くしたり,河川の水質を悪化させたりしてしまう。現在乾燥地の灌漑農業の1/3ほどが塩類の集積により砂漠化している。灌漑農地を作り出すには,多大な労力と費用が必要だが,毎年新しく生まれる灌漑農地とほぼ同じ広さの農地が砂漠化で失われている。
乾燥地でこれまでと同じように人口が増え続けると今後ますます食糧増産が迫られる,砂漠を食糧生産地や居住地に転換していく対策が求められている。
 砂漠化の拡大を防ぐ即効対策として,風による流砂を物理的にとめる方法がある。Moroccoでは,ヤシの葉の囲いが風によって運ばれる砂の量を減らすのに利用されてきた。また道路の傾斜を工夫することで砂の堆積を防ぐ方法もとられている。また,Algeriaでは温暖な地中海性気候を活用し,現地で「緑のダム」と呼ばれる防砂林を整備している。わずかな水でも生育し,地力の回復に役立つマメ科のアルファルファやユーカリ,松などの植林が国家事業として進められた。Tunisiaでは伝統的なオアシス農法を改良し,石造りのダムを活用したヤシやイチジク,オリーブなどが栽培されている。Egyptではでんぷんにポリアクリルという物質を重合させた保水剤が活用されている。保水剤は自重の500~1000倍の水を吸うので,作物の生育にちょうどいい水環境を作ることができる。収穫が3割増加したとの報告もある。

「Heath LandのEcosystem」
 Heath Landはツツジ科の常緑小低木が繁茂する荒地のことであり,樹木や背の高い薮がなく,地表近くにスゲやシダ類,地衣類が自生するのが特徴である。気候的には亜寒帯に属し,Englandの高地や北海道などが該当する。また土壌は,寒冷地で有機物の分解が進まず,水分は下方へ移動するため,化学成分が溶脱し,土壌は漂白され強酸性土のPodsolとなる。また,大型の動物がいないことで,豊富な土壌の有機物や落葉についた真菌類を餌とするヤスデなどの無脊椎動物が多く生息している。
このHeath Landは羊と雷鳥が食べる牧草として最適なものであり,山焼きによって管理されている。山焼きは地上の植生の大部分を消失させてしまうが,30%程の窒素と他の栄養分が灰として堆積される。15年ごとに行うことで,羊が食べるブルーベリーなどのツツジ科植物やワラビなどの新芽が出る時期と重なり,Heath Land全体の生態系が維持される。

〈参考文献〉
吉川賢『砂漠化防止への挑戦』中公新書1998
『新編地理資料』東京法令出版2012

日本語を母語としない子どもと保護者の高校進学ガイダンス2014

今年も「公益財団法人埼玉県国際交流協会」が主催する「日本語を母語としない子どもと保護者の高校進学ガイダンス」が大宮ソニックシティ4階の市民ホールで開催されます。

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詳細は 公益財団法人埼玉県国際交流協会「高校進学ガイダンス」 をご覧下さい。

海外で武力行使 可能に

本日の東京新聞朝刊の一面は、集団的自衛権の行使を禁じてきた憲法解釈を変え、行使を認める新たな解釈を決定する自公協議を批判する論調の記事で埋め尽くされていた。集団的自衛権は自国が攻撃されていないのに、武力で他国を守る権利で、自衛隊は海外での武力行使が可能となり、専守防衛を基本方針としてきた日本の安全保障条約は大きく転換する。

少し気になった記事を残しておきたい。自衛隊の活動範囲が逸脱すると軌を一にして、通信傍受が拡大し、司法取引が導入されるという事態は正直怖い。ここ十数年、1930年代との類似から「戦争前夜」と言われ続けてきたが、いよいよ戦争開始直前にまで時計の針が進んでしまった。竹島や尖閣諸島の報道を見るに、いつでも韓国や中国に米軍と一体となって戦争を仕掛けるお膳立てが用意されたと言ってよい。

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地理歴史科教育法 第2課題

高等学校学習指導要領「日本史A」

一 科目の性格と目標
「日本史A」は,政治や経済のみならず,民族や宗教,環境など地球規模で考えるべき社会問題が山積みのこれからの国際社会の中で,主体的に生きていくことが求められる若い世代に,わが国の歴史の展開について,特に近代社会が成立し発展する過程に重点をおいて,考察し,世界史的な視野に立って理解させることを狙いとした科目である。
また,目標の中に「地理的条件や世界の歴史と関連付け,現代の諸課題に着目して考察させる」とあるように,世界史や地理との関連性に留意して学習を進めるとともに,現代の社会やその諸課題が歴史的に形成されたとの見地に立って,「調べ考える」ことを重視している。

二 内容とその取り扱い
(1) 私たちの時代と歴史
文献や地図,写真,映像,統計,グラフなどのほか,博物館や郷土資料館などにある諸資料,身の回りの生活文化や地域の文化財,地名等,様々な歴史的資料を活用して,近現代の歴史的事象と現在との結び付きを考えることで,歴史への関心を高め,歴史を学ぶ意義に気付かせる。
(2) 近代の日本と世界
19世紀後半の明治維新前後から第二次世界大戦の終結までを扱う。日本は中央集権国家のもと資本主義経済の発展と相俟って大きな成長を遂げるが,世界経済の混乱等の中で全体主義へ転換し,戦争に突入していった。そうした流れの政治や経済,国際環境,国民生活や文化の動向を考察させる。
ア 近代国家の形成と国際関係の推移
開国から明治維新を経て,大日本帝国憲法成立に始まる近代立憲国家の成立を考察させる。単に暗記事項の羅列に留まらず,自由民権運動の隆盛や欧米諸国の圧迫,アジア諸国への強権的な対応など,複眼的な視線が求められる。また,日清・日露戦争による国民国家Ideologieの醸成と,政党政治の進展に注意を払う必要がある。
イ 近代産業発展と両大戦を巡る国際情勢
産業革命以降,金融制度が確立し,交通・通信の普及・拡大など,一つの工場における技術革新を超えて,社会革命に至った経緯を具体的に考察させる。都市や農村の生活の変化や社会問題の発生,学問や文化の進展,教育の普及,大衆社会と大衆文化の形成など,時代的背景に則して指導する。また,世界大恐慌を経て,国内経済の飽和が引き金となり,アジア近隣諸国との摩擦を生んできた状況を理解させる。
(3) 現代の日本と世界
第二次大戦後の政治経済,国際環境,国民生活や文化の動向について,国際社会における日本の立場を踏まえて,現代の諸課題と近現代史との関連を考察させる。
ア 現代日本の政治と国際社会
San Francisco平和条約の締結と日本国憲法の制定による平和で静穏な独立国家への希求と同時に,日米安保条約や「国際社会」への貢献という相反する舵取りを強いられてきた日本の政治の難しさを考察させる。
イ 経済の発展と国民生活の変化
戦後の窮乏から特需を経て,高度経済成長を遂げ,世界有数の経済大国となった経緯と,農村の過疎化や公害などの負の側面に留意して,国民の生活意識や価値観の変化を捉えさせる。

三 指導計画作成と指導上の配慮事項

  1. 中学校の授業や「地理」「世界史」の授業との関連を留意し,国際環境や地理的条件の観点から,世界の中の日本という視点から考察させる。
  2. 学習した内容が実社会・実生活の場面で生かすことができるように,基礎的な事項・事柄を精選して指導する。
  3. 地域の文化遺産,博物館や資料館の調査・見学などを取り入れ,抽象的な概念の操作だけに終わらせず,教室の外や卒業後まで歴史の学習を実体化させる工夫が求められる。
  4. 近代以降,自動車道や鉄道の敷設,高層住宅や団地の開発など,国民の日常生活が大きく変貌するような技術革新が続いている。衣食住や風習,信仰などの生活文化と近代のあり方を,作業的,体験的な学習を通して,多角的に理解させることが大切である。
  5. 近現代の学習にあたっては,現実的な利害や思想,宗教,価値観の対立が複雑に絡んでおり,歴史的事実を一面的に取り上げたり一つの立場からのみ理解させたりすることは避けたい。核兵器や戦争,「民主主義」など多面的な課題を平和裡に解決するための歴史的思考力を養うことが求められる。