三浦展『格差が遺伝する!:子どもの下流化を防ぐには』(宝島新書 2007)を読む。
首都圏に住む、小学生の子どもがいる1500人弱の母親へのインターネット調査を踏まえて、親の経済力や学歴、生活習慣などと、子どもの成績や性格との関連を分析している。
昔から「蛙の子は蛙」とあり、親と同じ生活環境の中で子どもは育まれる。著者は、数字の上からも、親の経済や文化の階層は子どもにしっかりと受け継がれていくと結論付ける。戦後経済成長の中で、「一億総中流」ということが言われたが、著者が定義づけた「下流化」(=単に所得が低いということではなく、勉強する意欲、働く意欲、生活する意欲、総じて人生全体への意欲が低い人たちのこと)に象徴される「格差」が「遺伝」している現状が証明された形だ。
そうした結論を踏まえて、著者は経済格差は如何ともし難いが、ゆとり教育で助長される文化格差は埋めなければならないと述べる。そして、学校の施設を借りた文化体験スクールなど、公立でもできる具体案を提唱する。
真にスポーツや文化、家族、自然と触れあう「ゆとり教育」を実現するためには、逆に学校の授業と宿題だけで自学自習ができるようにしなければならない。土曜日授業の復活や増えた祝日分を埋める授業日数を確保し、きちんと勉強をやらせる環境作りが、逆に真の「ゆとり」に繋がっていく方策を模索していかねばならないだろう。著者も最後に次のように述べる。
現実には、階層格差の拡大、固定化を問題視するのであれば、親の階層が低くても、親の経済的負担なしに子どもが努力次第で階層上昇できる仕組みを作るべきであり、その意味では、公立教育において実社会で役に立つ教育をすることには大きな意味があると言わねばならない。