日別アーカイブ: 2004年10月7日

『物語マリーアントワネット』

今日もまた落ち着かない一日を過ごした。いよいよ発表は明日に迫った。

窪田般彌『物語マリーアントワネット』(白水社 1985)を読む。
オーストリア帝国の女帝マリア・テレジアの愛娘としてルイ16世に嫁いだマリーアントワネットの一生を親愛を込めて描く。一般にマリーアントワネットというとフランス財政を逼迫させるほどの豪奢な生活を送り、重税に苦しんだ民衆の反感を買い、やがて断頭台に立たされる革命の憎まれ役である。しかし、マリーアントワネット一個人に歴史の転換点の役を荷なわせるのは間違いであり、あくまで唯物論的展開をなす歴史の発展の一局面にしか過ぎない。民衆による革命の正当性の分かりやすいエピソードとして祭られたに過ぎず、そうしたマリーアントワネット的な敵役を作ってしまうという民衆の側の心理状況を分析していくことが優先される。

『ああ無情』

ヴィクトル・ユゴー『ああ無情』(ポプラ社文庫 1985)を読む。
小学生でも読める振りがな付きの名作シリーズであるが、十分楽しめることが出来た。元囚人のジャン・バルジャンの悲哀に満ちた生活が映画的な手法で展開される。とても150年近く前に作られた作品とは思えない内容であった。『ああ無情』は世界で聖書の次に読まれているともいわれ、尾崎紅葉や田山花袋といった作家に強い影響を与えたと評される。確かに元囚人、下水道を逃げ回る主人公、刑事と犯人の宿命的な出会いなど現在の映画やアニメのそこかしこに『ああ無情』で描かれたシーンがちりばめられている。