玉置彰宏・浜田淳司『IT文明論:いまこそ基本から考える』(平凡社新書 2001)を読む。
インターネットやコンピュータのここ20年くらいの発展と、IT化によるビジネスや社会の変容を予測を交えて分かりやすく解説している。著者玉置氏は阪南大学経営情報学部の教授ということだが、ちょうど名前通り「経営情報学」といったような授業における新入生向けの入門書といった内容だ。刊行されてから3年も経ってしまうと読むべき所はないが、司馬遼太郎氏の引用は興味深かった。司馬遼太郎氏が著書『アメリカ素描』の中で文明と文化を次のように定義している。
文明は誰もが参加できる普遍的なもの、合理的なもの、機能的なものをさすのに対し、文化はむしろ不合理なものであり、特定の集団(たとえば民族)においてのみ通用する特殊なもので他に及ぼしがたい。
英語で”culture”と”civilization”は全く異なる概念であろう。しかし、日本語では「文化」と「文明」は一語しか違わず、どちらも知識や知恵を表わす「文」が入っており、ついつい混同してしまう語である。司馬氏の「文化」と「文明」を対立的に捉えるという指摘は面白い。