月別アーカイブ: 2017年9月

「原発本、薄れる興味 専用スペース設ける古書店が風化懸念」

本日の東京新聞夕刊に、東京の早稲田通りにある「虹書店」の記事が掲載されていた。
先日、反天皇制運動連絡会の天野恵一氏がカウンターに座っていた「寅書房」のことを10数年ぶりに思い出したばかりだったので目を引いた。

私の学生時代には、高田馬場までの商店街に、革新系の書籍を専門に扱っている古本屋として、谷書房、寅書房、虹書店の3店があった。確か革マル派と解放派とベ平連系の3派がそれぞれ贔屓にしている本屋だったと聞いた記憶があるが。。。

学生時代に溜め込んだ本がまだ本棚で埃をかぶっているので、どんどん読み直して(捨てて!?)いきたい。

『ミャンマー経済で儲ける5つの真実』

小原祥嵩『ミャンマー経済で儲ける5つの真実:市場・資源・人材』(幻冬舎新書 2013)を読む。
ベトナムで日本企業や日本人の東南アジア、特にメコン地域への進出時の事業計画立案や市場調査を手がける著者が、「アジアのラストフロンティア」とも言われるミャンマーでの工場建設や市場の魅力について語る。

ミャンマーというと仏教国で穏やかな国というイメージがあったが、ここ数日新聞やテレビでも、ミャンマー軍によるイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの弾圧が激化し、隣国へのバングラデシュへの脱出が報じられている。

 軍事政権の功罪の例として国内の民族問題を挙げる方がいます。ミャンマー国内には135もの民族が住んでいます。そのうちのいくつかの民族はミャンマーの独立(1948)以降、自治権の獲得や分離独立を時に武力を交えながら叫び続けていました。この民族自決の動きを時には武力で、あるいは停戦合意という形で封じ込め、国家としてまとめることができたのは軍事政権の持つ「力」に他ならないと言うのです。新政権発足後、センセーショナルに取り沙汰されるイスラム教徒と仏教徒の衝突も多数の死者を出すまでに発展してしまっているのは抑止力となっていた軍事政権によるタガが外れたためだとも言えます。

また、ミャンマー軍事政権の対外的なアピール下手も、軍政=悪の図式を助長したという指摘もあります。非民主的と言わしめておきながらも、軍政は釈明することなく、沈黙を守り続けてきたのです。

そうした軍政の外交姿勢と、軍政を非難し民主化を叫ぶスー・チーさんの存在も相まって、軍政=悪という構図はメディアを通じて世界中に広がっていきました。

特に米欧による経済制裁がその決定打でした。

軍事政権から民主政権への移行も、市場の開拓も欧米や中国の意向が色濃く反映されている。少数民族の弾圧もそうした「民主化」と軌を一にする問題と考えてよい。今後もミャンマーの政治・経済を注視していきたい。

「政治の怠慢 争えば害」

本日の東京新聞夕刊に、元駐中国大使の丹羽宇一郎氏の尖閣諸島に関する、素晴らしいコメントが寄せられていた。

丹羽氏は、石原東京都知事時代に危機感を煽り、民主党が出口への考えもなしに国有化を決めてから5年間、首脳同士の訪問もない状況になっていることへの打開策として次のように語る。

尖閣は日本の固有の領土で一寸たりとも譲るわけにはいかない。しかし同時に、領土の帰属は双方が納得する解決が難しい。俺の島だ、俺の島だと言い合いを続けても、争いや問題はなくならない。中国の公船が尖閣に来て周りをグルグル。これほど非生産的なことはない。だから今、できることから話し合いをするべきだ。

(具体的には)島の帰属問題は脇において、漁業協定、共同資源開発に向けた協議を始めるべきだ。漁業と資源で折り合いがつけば、無人島の帰属は大きな意味がなくなる。話し合いを始めるという簡単なことが5年もできていない。政治の怠慢だ。周恩来が言ったように「和すれば益、争えば害」だ。

(日中衝突の懸念について)尖閣を巡る戦争は起きない。尖閣周辺での漁業は燃料代が高くて日本から行く人は少ない。石油もよほど大量に採掘できないと採算が合わない。中国にとってもそんなに価値がある島ではない。もっと冷静に考えるべきだ。

(対中強硬論が目立つ中で)中国が嫌いとか厳しい意見を言う政治家は、中国の現状を知らない人が多い。実際に中国に行って、付き合ってみれば同じ人間。政治家の言っていることがおかしいと分かる。だから民間の人材交流が大切だ。

これまで尖閣諸島には石油や天然ガスなどの大量の地下資源が埋蔵されているという海底調査の結果で政治が動いてきたが、丹羽氏の言うように採算が合わないという事実が国際的に周知されれば、非生産的な小競り合いが無意味と分かり、生産的な国家間の話し合いが生まれてくるはずである。

また、2012年の尖閣諸島の国有化後、中国各地で反日デモが起きたが、尖閣国有化にこぞって反対する中国人の姿を演出するため、政府容認の下で組織されたとみられる。ネットを通じて集まった雑多なデモ参加者の一部が暴徒化し、平仮名やカタカナを看板に使っていた中国人経営の店が狙われた「同士打ち」の官製デモが大半であったようだ。

中国のメディア戦略を大々的に取り上げる日本のメディアにも問題がある。めちゃくちゃに破壊される商店のビデオ映像を何度も見せつけられては、中国に対する嫌悪感しか生まれない。草の根の民間交流の積み重ねが、たったひとつの映像でひっくり返されてしまってはたまらない。

尖閣諸島国有化
2012年9月11日、当時の野田政権は沖縄県尖閣諸島5島のうち魚釣島、北小島、南小島の3島を地権者から20億5000万円で購入、国有化した。中国は、周辺海域で石油資源埋蔵の可能性が指摘された後の1970年代に入り日本の領有を非難し始めていたため強く反発、公船による尖閣沖での領海侵入を常態化させ、中国国内では日本に対するデモが頻発した。日中政府は14年11月、不測の事態回避を目指すとの文書をまとめ、首脳会談も行ったが、国有化以降、中国の国家主席、首相の来日はない。

「北の国民苦労増す プーチン氏制裁強化に否定的」

本日の東京新聞朝刊に、ロシアのプーチン大統領が5日、北朝鮮の核実験にともなう制裁強化について「制裁はもう限界に達して効果がない。圧力をかけても北朝鮮の方針は変わらず数百万人の苦労が数倍増すだけだ」と否定的な考えを示したとの記事が掲載されていた。

プーチン氏は核実験自体は非難したが、米国の介入で独裁体制が崩壊したイラク、リビアなどを例に挙げ「北朝鮮は草を食べるようになっても、安心できるまで核開発は止めないだろう」「武力による威嚇は肯定的な結果をもたらさず、地球レベルの大惨事を生む」と対話堅持路線を求めた。

文面だけ読めば確かにプーチン大統領の発言は正論である。対米国戦略の一環での発言であろうが、「武力威嚇からは否定的な結果しか生まれない」という趣旨は正しい。

韓国・文在寅政権も経済制裁では北朝鮮の核・ミサイル開発を止めらないと、対話による解決に活路を見出している。

日本政府は無思考に米国に追従するだけであるが、文在寅政権に歩み寄り、韓国と共同歩調を取ることが求められる。日韓の連携の対話路線が、米国やロシア、中国がかき乱す東アジア秩序を支えることは間違いない。日米軍事演習、米韓軍事演習が先鋭化し、日韓の齟齬が目立つ情勢こそが一番の危険因子である。

「ナチス被害110兆円」

本日の東京新聞夕刊に、ポーランドのワシチコフスキ外相が4日、第二次世界大戦のナチス・ドイツの侵攻による被害が1兆ドルを超えるとの見方を示し、「1939年の侵攻が両国関係に影を落としていることについて、ドイツと真剣に話し合う必要がある」と述べたとの記事が掲載されていた。

ワシチコフスキ氏は「ポーランドが破壊され、ひどい犯罪行為があり、補償が支払われていないのは事実だ」とした上で、賠償請求に関して準備していると説明し、メディアや司法の統制を強めるポーランドの強権的な政策を批判するドイツを牽制している。一方ドイツ側は、オーランドが戦後賠償請求を放棄したため請求権は既に消滅したとの立場を取っており、ポーランドが実際に賠償請求すれば、両国の対立に発展する恐れがある。

日本は歴史に向き合わず、戦後補償もサンフランシスコ条約や日中平和友好条約、日韓基本条約で解決済みという姿勢で、周辺国との対話を拒否してきたが、一方、ドイツはナチスの歴史に真摯に向き合い、戦後補償をきっちりと行ってきたので、周辺の国から信頼を得てきた。何かの本でそんな内容の文章を読んだ記憶があり、戦後処理においてドイツは日本の手本のように感じていたのだが、上記のようなポーランドとの軋轢があるとは知らなかった。ポーランドが戦後請求を放棄したというが、韓国が請求を放棄したのと同じである。条約の文面だけでなく、冷戦や軍事政権といった歴史を考慮してもう一度、検証していく必要があるだろう。ドイツとポーランド間においても歴史認識の共有化作業が求められるだろう。