本日の東京新聞一面は、公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、軍事部門の売上高が世界で10位以内に入るすべての企業の株式を保有しているとの内容だった。10社の中には、ミサイル防衛システムやステルス戦闘機F35を製造するロッキード・マーチン社や垂直離着陸輸送機オスプレイの開発を担ったボーイング社、巡航ミサイル・トマホークの製造元であるレイセオン社などが含まれる。
趣旨がずれてしまうのだが、解説の記事の構成が、小論文の見本のようなものであった。起承転結の4段落構成をきっちりと遵守しており、指導の材料に是非使ってみたい。
公的年金は、高齢者の生活を支える社会保障制度の中核。積立金を確実に運用して、利益を上げることの重要性は疑いない。だが、それだけでいいのか。
GPIFによる株式保有が判明した軍事関連企業が本社を置く欧米の国々は、過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦に有志国連合として参加するなど紛争に直接関わっている。
各企業は紛争が激化するほど武器や装備品の売り上げを伸ばし、株価を上げる。株価が上がれば、GPIFの運用益も増える。
増え続ける高齢者を養うための年金積立金が、国民の知らないうちに「軍事支援」に転用されている構図は、倫理上許されるとは思えない。
現行法では、政治的な介入や担当者の恣意的な運用を防ぐため、業種を問わず企業株を自動的に購入する以外に選択肢はなく、こうした投資を排除できない。
日本国憲法は前文で、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と宣言している。年金財源確保のためなら、他国で紛争を助長しても仕方ないということにはならない。国会でのルール見直しの論議が急務だ。(中根政人)