東京大学教養学部『高校生のための東大授業ライブ』(東京大学出版会,2007)を数編だけ読む。
「知の技法」や「教養のためのブックガイド」など、東京大学教養学部の「上から目線」の教養シリーズである。
磯﨑行雄「地球は『やさしい惑星」かー生命の絶滅と進化」より
6500年前の中生代と新生代の境界(K /T境界)で、アンモナイトや恐竜、プランクトン動物など、中生代の多くが一斉に絶滅している。この時期の地層に宇宙空間んをただよう隕石にたくさん含まれているイリジウムが異常に濃集していたことから、巨大隕石の衝突が原因であると言われている。メキシコのユカタン半島の巨大クレーターの研究から、衝突した巨大隕石のサイズは、山手線がスッポリと入るくらいの直径10kmあったと推定されている。高さ100mを超える巨大な津波が地球上を駆け巡り、大陸の広大な森林が大きな山火事に包まれ、衝突によって莫大な塵が大気に巻き上げられ、世界は昼夜を問わず暗黒となり、急激な寒冷化が起きたと考えらえる。また、蒸発した成分には硫黄や窒素が含まれており、硫酸や硝酸を含む酸性雨が世界中で降ったと推測される。植物の光合成がストップし、それを食料にしていた動物たちの餌が枯渇し、大量の生物が絶滅した
5.5億年まえから始まった古生代と2.5億年前から始まった中生代の境界(P /T境界)で起きた絶滅は、無脊椎動物の90%以上が絶滅した史上最大の大量絶滅である。しかし、この原因はまだよくわかっていない。
磯﨑氏は中生代に入り、超大陸のパンゲア大陸の分裂が始まることに注目している。1990年代以降、厚さ100kmのレートテクトニクスとは別に、深さ2900kmのマントルの内部から鉱物が上昇するプルームの研究が進んでいる。磯﨑氏によると、直径2000kmに及ぶスーパープルームが形成され、超大陸の分裂が始まり、大規模な火山活動により、有毒ガスや酸性雨、太陽光遮断、寒冷化、その後の温暖化、暗黒化のために光合成の停止などが世界中で起きたと考えられる。
少し古い話だが、コケ植物が陸上に進出したのは4.3億年前である。昆虫の誕生も同じ時期である。これは5億4000年のカンブリア爆発とよばれる、多様な生物が一気に進化した時期の延長となっている。この遠因に、約7.5億年前から6億年前ごろの「全球凍結」が考えられている。これは2万年前の氷河期とは比べものにならないもので、地表の平均気温は氷点下40度まで下がり、地球の海全部が氷に覆われたとのこと。しかし、この全球凍結時期にも原核生物やバクテリアなどは地道に進化を続け、次の古生代の多様性に繋がっている。
安冨歩「人生をファンタジー化しようー中国・黄土高原から」
黄土高原は黄河の中流域に広がり、黄土と呼ばれる細かい土壌材料が100m前後も堆積して形成されている。黄土は砂よりも細かく、小麦粉のような粒子でできていて、乾燥するとコンクリートのように硬いのですが、水に溶けやすく、雨が降ると一気に流れ出していく。この泥水が黄河に流れ込んで、黄色く濁った水になる。土壌侵食が著しく、年間16億トンの土壌が失われている。しかし、始皇帝が万里の長城を築いた頃、黄土高原は森林と草原が織りなす景色が広がっていた。その後の人間による過伐採や過開墾、過放牧が原因と言われている。
この項を担当された安冨氏は面白い経歴の持ち主である。れいわ新選組から立候補したり、男性のフリをやめて女装したりしており、現在は東松山市に在住しているとのこと。
