小原祥嵩『ミャンマー経済で儲ける5つの真実:市場・資源・人材』(幻冬舎新書 2013)を読む。
ベトナムで日本企業や日本人の東南アジア、特にメコン地域への進出時の事業計画立案や市場調査を手がける著者が、「アジアのラストフロンティア」とも言われるミャンマーでの工場建設や市場の魅力について語る。
ミャンマーというと仏教国で穏やかな国というイメージがあったが、ここ数日新聞やテレビでも、ミャンマー軍によるイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの弾圧が激化し、隣国へのバングラデシュへの脱出が報じられている。
軍事政権の功罪の例として国内の民族問題を挙げる方がいます。ミャンマー国内には135もの民族が住んでいます。そのうちのいくつかの民族はミャンマーの独立(1948)以降、自治権の獲得や分離独立を時に武力を交えながら叫び続けていました。この民族自決の動きを時には武力で、あるいは停戦合意という形で封じ込め、国家としてまとめることができたのは軍事政権の持つ「力」に他ならないと言うのです。新政権発足後、センセーショナルに取り沙汰されるイスラム教徒と仏教徒の衝突も多数の死者を出すまでに発展してしまっているのは抑止力となっていた軍事政権によるタガが外れたためだとも言えます。
また、ミャンマー軍事政権の対外的なアピール下手も、軍政=悪の図式を助長したという指摘もあります。非民主的と言わしめておきながらも、軍政は釈明することなく、沈黙を守り続けてきたのです。
そうした軍政の外交姿勢と、軍政を非難し民主化を叫ぶスー・チーさんの存在も相まって、軍政=悪という構図はメディアを通じて世界中に広がっていきました。
特に米欧による経済制裁がその決定打でした。
軍事政権から民主政権への移行も、市場の開拓も欧米や中国の意向が色濃く反映されている。少数民族の弾圧もそうした「民主化」と軌を一にする問題と考えてよい。今後もミャンマーの政治・経済を注視していきたい。