月別アーカイブ: 2014年3月

『ローン・サバイバー』

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子どもをお風呂に入れてから、春日部イオンで、ピーター・バーグ監督・脚本『ローン・サバイバー(原題:Lone Survivor)』(2014 米)を観た。
3ヶ月前に購入したイオンシネマパスポートの有効期間の最後の日だったので、名残惜しくチケットを受け取った。10,000円もしたパスポートであったが、十分に元は取ったはずだ。これからは有料になるので、しばらく映画館通いを控えようと思う。

映画自体は、アメリカ海兵隊の特殊部隊ネイビーシールズ史上最悪の惨事と呼ばれたレッドウィング作戦の全貌を描いた戦場アクションである。実際に作戦に参加し唯一生還した兵士の回顧録を原作に、アフガニスタンでのタリバン勢力との極限状況下の戦場の真実がリアルに映し出されている。
この手のハリウッド戦争映画にありがちな、結局は米国の愛国主義に流れ込ませるような、友情や勇気が主題となっている。しかし、たった一人の敵を殺すために何百人の人間が犠牲となったり、逆に一人の仲間の兵士を救うために、これまた何十人の犠牲を払ったりする戦争のバカバカしさは十二分に伝わってきた。一体戦争にどんな意味があるのか。国家レベルではアラブの大義だの、民主主義だの喧しい。しかし、実際の戦闘場面では、一発の銃弾でいとも簡単に命を粗末にされていく不毛なものである。

『足元に活断層』

金折裕司『足元に活断層』(朝日新聞社 1995)を読む。
阪神大震災のすぐ後に出版された本で、執筆当時岐阜大学で応用地球科学を専攻していた著者が、特に中部地域(糸魚川—静岡構造線の西側、中央構造線の北側)での地震の発生メカニズムとその予知の可能性について語る。
タイトルを見ると軽めの本かと勘違いするが、中身は地学の専門書に近い内容のものであった。途中地震のマグニチュードとその発生頻度をlogで表した式などが載っていたが、さあっと読み飛ばした。

金折氏は「内陸直下型地震は地殻を切る構造線の活動で起きる。活断層はその活動に反映して地表に現れた破壊面(キズ)である」という持論のもと、大陸プレートの褶曲部に位置する糸魚川—静岡構造線や、諏訪湖から大分別府まで延びる中央構造線、敦賀湾—伊勢湾構造線、有馬—高槻構造線などに加え、フィリピン海プレートの境界部にある相模トラフや南海トラフが地震エネルギー発生地点であると述べる。
局所的には地震の発生の仕組みも、その周期も解明されているのだが、地震はその公式通りには発生しない。構造線のズレで発生したエネルギーが離れた地点で生じたり、一つのズレがたのズレを引き起こしたりする。結局は地震の発生原因は後付けになってしまい、予知そのものの信憑性にすら疑問が投げかけられている。

「エピローグ」の中で、金折氏は自身の研究を振り返って次のように述べる。

地震をいくら詳しく研究しても、断層をいくら細かく調査しても、そこからは何も生まれてこない。自然現象を研究しようとするなら、地震や断層から何を知り、何を解明しようとするのか、何を知ることが人類にとって一番重要なのかを、十分に考えていく必要があろう。目的のない研究からは何も生まれてこない。

『面白いほど仕事がうまくいくウラ技手帳術』

山口義徳『面白いほど仕事がうまくいくウラ技手帳術』(ぱる出版 2009)を半分ほど読む。
高卒後多くの業種を経験するが会社倒産により失業し、ハローワークから3年8ヶ月で社長にまで上り詰めたというサクセスストーリーを持つ著書が、自身の手帳術を分かりやすくまとめている。タイトルにある通り、営業職で外回りをするビジネスマンを対象に、商談のアポイントやメモ、交渉の駆け引きのポイントに絞って説明している。
この手の手帳術の本は、手帳術以上に著者の経歴に焦点が当てられることが多い。しかし、この本は著者や知人の紹介のページも無く、ただ淡々と参考書のように2ページ1項目で説明が続いていく。手帳を使っている「人」が見えてこない。途中から飽きてしまった。

“地理院地図3D”

本日、出勤途中にいつも聞いているTBSラジオから、国土地理院が3Dプリンターで立体地図が作成できるデータを公開したとのニュースが流れた。
早速、家に帰って国土地理院のホームページを見たところ、日本全国の地図が全て3Dデータ化されていた。このデータで気軽に立体模型が作れたら、実際に水を流して、河川の土砂災害の様子を分析したり、水中に徐々に沈めていって温暖化による水面上昇の被害を観察したり、教室で災害のシュミレーションをすることが可能となる。これまで紙媒体にせよ、電子媒体にせよ、平面から立体を想像せざるを得なかった地図が、「実験」によって再現可能な地球科学の材料となるのだ。
これからの教材研究、授業工夫の可能性が大いに広がっていくワクワクするようなニュースであった。そのうち、地表温度や海水温、気圧や風力の値などを入力したら、そのデータ通りの雲や台風が作れるようになるのであろう。

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『石原良純のこんなに楽しい気象予報士』

石原良純『石原良純のこんなに楽しい気象予報士』(小学館文庫 2001)を読む。
芸能人として活躍する著者が、少年時代の気象に関する興味や、気象予報士の受験体験記、受験テクニック、気象予報士としての仕事などを思いのままに語っている。タレント本と学術系新書の中間くらいの内容である。
気象学についての説明があるわけではないが、500hPa面の高層天気図の重要さや、アメリカ中西部での竜巻発生のメカニズムなど、知識になるような話が興味深かった。
石原氏も徹底して読みこなした、気象予報士の学科試験の内容を網羅していると言われる、『わかりやすい天気図の話』(クライム気象図書出版)と『一般気象学』(東京大学出版会)を早く読んでみたくなった。いや、そのまえに物理と地学の基礎をしっかりと学ぶ必要がありそうだ。