泉忠司『泉式文科系必修論文作成術』(夏目書房 2003)を読む。
今月半ばより始まるレポート作成の一助となればという思いで手に取ってみた。ずいぶん長い間本棚に眠っていた本である。
高校時代に愛読した予備校講師による「実況中継シリーズ」の論文編のような内容である。大学の大教室で行われているような、小テストを挟みながらの論文講義がそのまま収録されているような、大学講義に耐えうるしっかりした内容と軽妙な語り口が印象的である。
著者は英文学を専門としており、英語論文で必須となっている「パラグラフ・ライティング」の理論と実践例が、練習問題と会わせて紹介されている。
「パラグラフ・ライティング」とは、「トピック・センテンス」、「サポーティング・センテンス」、「コンクルーディング・センテンス」の3つからなる。最初に「トピック・センテンス」でそのパラグラフのテーマなりポイントを明言し、続く「サポート・センテンス」でトピックの背景の概説やトピックそのものの補足説明や例証を示し、最後に「コンクルーディング・センテンス」で筆者の主張を述べるという形である。一つのパラグラフには一つのトピックという原則があり、別のトピックを述べたい場合は、パラグラフを分ける必要がある。またパラグラフとパラグラフを繋げる場合は、「コンクルーディング・センテンス」に替わって、つなぎ役となる「コネクティング・センテンス」で文章を綴っていく。何やら日本式論文の「序論」「本論」「結論」に似ているが、「パラグラフ・ライティング」は、一つのパラグラフの中で「序論」「本論」「結論」に相当する3つのセンテンスを並べて展開していく。
日本式論文では、旧来の「起承転結」の影響もあり、「結論」は始めに置かず、「序論」「本論」と展開していくことで最後に主張を配置する。しかし、英米式の「パラグラフ・ライティング」では、「本論」「結論」のダイジェストが「序論」にあたる。そして「序論」を肉付けする「本論」、「本論」を振り返りつつ「自分なりの主張」を念押しする「結論」という流れをとる。書く技術以前に、そもそもの発想の転換が求められる。
その他、効果的な情報収集や注釈の入れ方、参考文献の記述の仕方など、論文作成のイロハについて隈無く説明されている。これまで適当に処理していた引用の方法が勉強になった。引用してみたい。
引用文が長い場合と短い場合で、引用の方法は異なる。引用文が短い場合(本文で2行に満たない場合)は本文中に「 」を使って引用し、引用文が長い場合は前後1行の空白行と、縦書きの場合は上下(上だけでもよい)、横書きの場合は左右(左だけでもよい)2〜4文字分の空白を取って引用する。この場合、「 」は不要。
一冊読んだだけで身につくものではないが、これからのレポート作成の時に意識しておきたい。