金折裕司『足元に活断層』(朝日新聞社 1995)を読む。
阪神大震災のすぐ後に出版された本で、執筆当時岐阜大学で応用地球科学を専攻していた著者が、特に中部地域(糸魚川—静岡構造線の西側、中央構造線の北側)での地震の発生メカニズムとその予知の可能性について語る。
タイトルを見ると軽めの本かと勘違いするが、中身は地学の専門書に近い内容のものであった。途中地震のマグニチュードとその発生頻度をlogで表した式などが載っていたが、さあっと読み飛ばした。
金折氏は「内陸直下型地震は地殻を切る構造線の活動で起きる。活断層はその活動に反映して地表に現れた破壊面(キズ)である」という持論のもと、大陸プレートの褶曲部に位置する糸魚川—静岡構造線や、諏訪湖から大分別府まで延びる中央構造線、敦賀湾—伊勢湾構造線、有馬—高槻構造線などに加え、フィリピン海プレートの境界部にある相模トラフや南海トラフが地震エネルギー発生地点であると述べる。
局所的には地震の発生の仕組みも、その周期も解明されているのだが、地震はその公式通りには発生しない。構造線のズレで発生したエネルギーが離れた地点で生じたり、一つのズレがたのズレを引き起こしたりする。結局は地震の発生原因は後付けになってしまい、予知そのものの信憑性にすら疑問が投げかけられている。
「エピローグ」の中で、金折氏は自身の研究を振り返って次のように述べる。
地震をいくら詳しく研究しても、断層をいくら細かく調査しても、そこからは何も生まれてこない。自然現象を研究しようとするなら、地震や断層から何を知り、何を解明しようとするのか、何を知ることが人類にとって一番重要なのかを、十分に考えていく必要があろう。目的のない研究からは何も生まれてこない。