日別アーカイブ: 2015年1月18日

『芸人学生、知事になる』

東国原英夫『芸人学生、知事になる』(実業之日本社 2008)を読む。
20年近くテレビの華やかな世界で活躍をしてきた著者が、41歳にして「淫行事件」で芸能活動を自粛し、42歳で一念発起して早稲田大学に入学し、そして49歳で宮崎県知事に就任するまでの、ジェットコースターのような10年間の生活や思いが綴られている。仕事が終わってから大学に駆けつけるドタバタ話や、大学に通う生活そのものを楽しもうとする著者のひたむきな気持ちに共感を覚えた。
ちょうど自分自身の年齢と同じだったので、自分の今の心境に引きつけながら読むことができた。

大学で学ぶということについて東国原氏は次にように述べる。

 「いまさら勉強してどうするの?」
 たまに聞かれることがある。僕は返事に窮する。いろいろ説明したいが、とてもひと口ではいい表せない。そんなとき、こんな質問が当たり前に出てくるようでは、この社会はまだダメだなぁと思う。学ぶことの意義が理解されていない。人間、学ばないでどうするよ。まさに生涯学習、生涯スポーツの理念だ。
 常に問題意識をもって、テーマを決めて、それに対して論理的に考えていく。そして、社会に還元する。そのほうが人間として当たり前の営みだと思う。社会にとって有意義であると同時に、なにより本人の生きがいにもなる。
 本当に学びたくなったときに学べない人生は不幸だ。家庭の事情、仕事の事情で学ぶことが許されない人たちは本当に気の毒だと思う。高校卒業のときだけ大学に入るのではなく、大学はいつでも通っていい場所だ。学びたくない時期は、無理に大学へ通わなくてもいい。本来の学ぶ悦びが味わえない。そのうえ時期とおカネを捨てることになる。
 大学は本当に学びたくなったときに行けばいい。世間がそう認めれば、きっと真剣に学ぶ人たちも増えるだろう。学びたいという純粋な欲求はいつ芽ばえるかわからないのだ。

『教育欲を取り戻せ!』

ビートたけしが出演するテレビ番組「情報7days ニュースキャスター」つながりで、齋藤孝『教育欲を取り戻せ!』(生活人新書 2005)を読む。
「学び続ける」ことの意義を説く本は多いが、本書は視点を替えて「教える」ことの意義や面白さに着目している。スポーツにおける教え上手や親子の教育の難しさの例から、モテるための教育欲や社会の中の教育欲など、学ぶことよりも教えることで好循環を生む仕組みを丁寧に説明している。
最後に著者は次のように述べる。

 性欲は若いころがピークでどんどん落ちていくものですが、教育欲は衰えることを知りません。右肩上がりになっていくものです。老齢になったときに上手に教える教育欲を満たす仕組みを作ってあげることが必要です。
 物欲や性欲などにまみれたことがあったとしても、最終的には教育欲で最期を迎えるのが人生の美しい形ではないでしょうか。

『間抜けの構造』

ビートたけし『間抜けの構造』(新潮新書 2012)を読む。
政治家や漫才、落語における「間」から、司会者やスポーツ、映画における「間」まで、様々な思惑や駆け引きが混在する「間」の重要性について語られる。お笑い芸人の失敗例や野球選手の成功例などの分かりやすいエピソードが紹介されているので気軽に読むことができた。茶室や能における「空気」や日本人のメンタリティーにも言及されている。一流のゴーストライターが関わっているのであろうか、べらんめえ口調だが、入試問題に出てきそうな文化論ともなっている。