東国原英夫『芸人学生、知事になる』(実業之日本社 2008)を読む。
20年近くテレビの華やかな世界で活躍をしてきた著者が、41歳にして「淫行事件」で芸能活動を自粛し、42歳で一念発起して早稲田大学に入学し、そして49歳で宮崎県知事に就任するまでの、ジェットコースターのような10年間の生活や思いが綴られている。仕事が終わってから大学に駆けつけるドタバタ話や、大学に通う生活そのものを楽しもうとする著者のひたむきな気持ちに共感を覚えた。
ちょうど自分自身の年齢と同じだったので、自分の今の心境に引きつけながら読むことができた。
大学で学ぶということについて東国原氏は次にように述べる。
「いまさら勉強してどうするの?」
たまに聞かれることがある。僕は返事に窮する。いろいろ説明したいが、とてもひと口ではいい表せない。そんなとき、こんな質問が当たり前に出てくるようでは、この社会はまだダメだなぁと思う。学ぶことの意義が理解されていない。人間、学ばないでどうするよ。まさに生涯学習、生涯スポーツの理念だ。
常に問題意識をもって、テーマを決めて、それに対して論理的に考えていく。そして、社会に還元する。そのほうが人間として当たり前の営みだと思う。社会にとって有意義であると同時に、なにより本人の生きがいにもなる。
本当に学びたくなったときに学べない人生は不幸だ。家庭の事情、仕事の事情で学ぶことが許されない人たちは本当に気の毒だと思う。高校卒業のときだけ大学に入るのではなく、大学はいつでも通っていい場所だ。学びたくない時期は、無理に大学へ通わなくてもいい。本来の学ぶ悦びが味わえない。そのうえ時期とおカネを捨てることになる。
大学は本当に学びたくなったときに行けばいい。世間がそう認めれば、きっと真剣に学ぶ人たちも増えるだろう。学びたいという純粋な欲求はいつ芽ばえるかわからないのだ。