狭山ヶ丘高校校長小川義男『カリスマ校長の“名作の感動”を子どもとじっくり味わう本』(青春出版社 2004)を読む。
ベストセラーになった『あらすじで読む日本の名著』を編集し、テレビやラジオ等でも幅広く活躍している人物とのこと。多分に学校の宣伝材料という側面が強く、あまり目新しい内容はなかった。
子どもの教育についても紙幅を費やしており、「教育は知識を詰め込む活動にほかならない」と、一定程度の強制力を持った躾と読書指導を主張している。教育少々右よりな発言が気に障る所である。
月別アーカイブ: 2009年12月
パンフレット研究:山梨学院大学
山梨学院大学のパンフレットを読む。
箱根駅伝で全国区となった同大であるが、田舎にあるのんびりとした大学というイメージは見事に覆された。最近できた大学かと思っていたが、1946年創立の山梨実践女子高等学院を母体とし、1962年に4年制大学として発足している。現在は法学部、現代ビジネス学部、経営情報学部の3学部で構成されている。しかし、全部で93ページのパンフレットであるが、前半の47ページまで就職や強化スポーツクラブ、キャンパス情報などで埋められており、学部の説明が全くない。郊外型大学の特徴である就職予備校となっている。特に警察官や消防士、教員といった公務員試験対策に力を注いでいる。
また、都内との近さを全面に出しており、キャンパスの正門には新宿からの高速バスのバス停も設置されている。
「強化育成クラブ」には陸上競技部、レスリング部、スケート部、ホッケー部、水泳部、柔道部、ラグビー部、硬式野球部、テニス部、ソフトボール部、サッカー部、バスケットボール部、空手道部の13の部が指定されている。そのどれもが関東リーグに所属している。キャンパス周辺に立派な施設が完備されており、スポーツ推薦で入学し、将来は公務員を漠然と考えている学生にとってはうってつけの大学になるのかもしれない。
中央線酒折駅から徒歩2分の「駅前キャンパス」を売りにしており、山梨だけでなく長野や静岡、新潟から多くの学生が集まっているため、入試もそれほど複雑になっていない。
パンフレット研究:國學院大学北海道短期大学部
國學院大學創立100周年の記念に、1982年に北海道滝川市に設立された國學院女子短期大学を母体とする。滝川市は札幌から特急で1時間、旭川からも30分の不便な場所にある。おそらくは大学のブランドを滝川市が誘致したのであろう。
現在は男女共学化され、國學院大學との関係も緊密になり、希望者の大半が3年次に國學院大学への編入が可能となっている。現在は国文科、総合教養学科、幼児・児童教育学科の3学科編成となっている。特に総合教養学科は國學院大學の文学部だけでなく、法学部や経済学部への編入も希望すれば実現できるようである。
入試でも國學院大學との併願入試が可能であり、國學院大學に落ちた学生の受け皿ともなっている。そのため、関東圏からの学生も多数入学している。國學院大學側にとってみればバブル期の間違った拡張経営の残滓であろうが、短大側にとってみれば、國學院への進学が90%以上保証されているというのは、この上ない宣伝要素である。
パンフレット研究:星薬科大学
東急池上線戸越銀座駅から徒歩8分の便利な場所にある。6年制の薬学部と4年制の創薬科学科で構成されている。この大学名の「星」は1920年に星製薬株式会社の教育部門である星製薬商業学校にちなむ。星製薬はSF作家星新一氏の実父の星一(はじめ)氏が創立した会社である。その創立から破綻までのドラマは、星新一氏の『明治・父・アメリカ』や『人民弱し官吏は強し』といった作品に詳かに描かれている。私も中学校時代に読んでいたく感動し、感想文の宿題で、一丁前に経営の面白さについて書いた記憶がある。
パンフレットを読む限り、星薬科では設立後一貫して「人材育成」を掲げ、他学部を開設するなどの拡大経営をせず、付属の病院すらない。一時期の薬学部ブームは去ったとはいえ、公募推薦で3倍、一般入試で5倍近い受験生を集めている。
しかし、慶応大学と共立薬科大学が合併したように、今後の薬学部は、医学部や付属病院との連携が求められており、いつまでもブランドの上に胡座をかいてはいられないであろう。立地を考えると、薬学部のない東海大学もしくは、横浜市立大学などと合併の道を探るというのはどうであろうか。
パンフレット研究:城西国際大学
埼玉県の坂戸にある城西大学の姉妹校として1992年に開学した新しい大学である。千葉県東金市に位置し、薬学部、福祉総合学部、経営情報学部、メディア学部、国際人文学部、観光学部に加え、2010年には環境社会学部が開設される。特に環境社会学部は、「家庭菜園」や「色彩の心理」「アグリビジネス」「エクステリア」など、環境に少しでも関係するような授業を寄せ集めたようなところで、開学前から雲行きが心配される。
しかし、既存の学部も定員割れしているところがほとんどで、東京紀尾井町や幕張にサテライトキャンパスを構え、最先端IT環境やキャリア教育、インターンシップや強化指定クラブ活動、国際交流、奨学制度など、「郊外型大学」で見られるあらゆる経営戦略が用いられている。東京駅や横浜駅からもスクールバスが運行しているが、長時間かけて通う価値があるかどうかについては限りなく疑問符が伴う。