サイバーリテラシー研究所所長矢野直明『インターネット述語集:サイバースペースを生きるために』(岩波新書 2000)を読む。
インターネットにまつわる技術や歴史を分かりやすく解説しながら、技術が先走ることで生じる曲解に基づく表現の自由や通信の秘密の侵害について丁寧な批判を展開する。著者の主催するサイバーリテラシー研究所のホームページを是非参照されたい。単にコンピュータやインターネットを使いこなすだけのコンピュータリテラシーから一歩踏み込んで、コンピュータ上の情報を国家が規制することが、延いては市民社会を脅かすことにつながることを意識することを強調している。本著ではイシエル・デ・ソラ・プールが1980年代の前半に述べた次の言葉を紹介している。
21世紀の自由社会では、数世紀にもわたる闘いの末に印刷の分野で確立された自由という条件の下でエレクトロニック・コミュニケーションが行われるようになるのか、それとも、新しいテクノロジーにまつわる混乱の中で、この偉大な成果が失われることとなるのか、それを決定する責任はわれわれの双肩にかかっている」