ラッシェル・ベイカー著・宮城音弥訳『フロイト』(講談社現代新書 1975)を読む。
著者であるベイカー氏はどっかの大学の心理学者ではなく、伝記作家であるので、難解なフロイトの学説よりもフロイトの人生そのものにスポットをあてている。
フロイトは19世紀末から20世紀の前半にかけてオーストリアのウィーンで活躍した心理学者である。しかし、ユダヤ人であるというだけで、出世の道を断たれ、民族的な偏見もあってか、ユングやアドラーとも不仲になってしまい、晩年はナチスによって家族を虐殺され、自身も英国への亡命を余儀なくされた苦労を強いられた人物である。フロイトの精神分析が彼の生き方や時代に規定されたものだということが理解できた。フロイト自身の次の言葉が印象に残った。
人間は強い考えを抱いているかぎりにおいてのみ強い。