月別アーカイブ: 2024年4月

『生物学のすすめ』

黒田洋一郎・馬渕一誠編『生物学のすすめ』(筑摩書房 1997)をパラっと読む。
発生生物学やがん、老化、免疫学、神経科学、遺伝子テクノロジー、進化など、一項目だけで本ができなそうなバラエティに富んだ内容となっている。しかし、一つ一つが極めて専門的な内容となっているので、素人には手が出ない。序章の中で、「この本は、研究者をめざす人達に対して生物学を研究してみませんかというお誘いの本でもある」とあり、納得の一冊であった。

『うたの旅人Ⅱ』

朝日新聞be編集グループ『うたの旅人Ⅱ』(朝日新聞出版 2010)をパラパラと読む。
朝日新聞に連載されていたシリーズもので、ヒットした曲が歌われた土地を尋ね、作曲者や作詞家が込めた思いを探るという面白い企画である。

私が小学校教員免許の認定試験の課題曲となった唱歌「故郷」を訪ねる企画もあった。「故郷」に歌われた風景は、作詞家高野辰之氏が幼いころをすごした長野県の永江村(現・中野市)だという。だから歌詞に山や川はあっても、海は出てこない。「兎追ひし」とあるが、肉が手に入りにくい時代に大切なタンパク源をとるために、師が兎肉を求めた「兎追い」のことである。

また、山下達郎さんの「クリスマスイブ」であるが、団塊ジュニアの私たちは、「クリスマス=恋人の時間」という発想が刷り込まれている。しかし、コラムニストの堀井憲一郎さんの著書『若者殺しの時代』(講談社現代新書)によると、日本でクリスマスが「恋人たちのもの」と宣言されたのは1983年と明確に言い切っている。日本で初めてシティホテルで過ごすイブの夜を恋人たちに提案したのが、1983年12月に出た雑誌「アンアン」の「クリスマス特集」だったというのだ。1980年代末期には、この特別な夜に過ごす相手もいない青春は恥ずかしいという強迫観念が醸造されることとなり、堀井氏はこうした雰囲気をクリスマス・ファシズム」とさえよび、1990年11月13日号の「週刊プレイボーイ」では「正義のキャンペーン開始 俗悪クリスマスをぶっ潰せ!」という記事さえ登場している。

『ものづくりに生きる』

小関智弘『ものづくりに生きる』(岩波ジュニア新書 1999)をパラパラと読む。
工業高校を卒業して、大田区の町工場で48年間にわたって旋盤工として働いてきた経験が語られる。バブルが弾けた90年代後半に書かれた本なので、あとがきの中で著者は次のように語る。

1990年代はじめの、いわゆるバブルの崩壊以来、手をこまねいていては生きていけないと知った町工場の人たちが、自分の技と知恵を生かして、新しいものづくりをする姿は、わたしには感動的なものであった。
産業界に限らずのことだが、景気回復をねがう声は強い。しかし”回復”のねがいが、あのバブルの時代にもどるものであってはならない。ものづくりする人びとは、そのことをよく知っていて、「あのころはどうかしていた」という。欲まみれ、金まみれの社会はもうたくさんだという。
そういう反省に立って、ものづくりを社会の礎にした、地道で実のある暮らしを望む人が多くなった。こんなふうにして、日本の社会は成熟してゆくのだろうかと、わたしは期待している。

実際は、そのあとにITバブルと円高が来たので、日本でものづくりの機運は高まることはなかったが、手が仕事を覚えているという実感は生きる力に繋がってくるはずである。