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『土と岩石』

地学団体研究会編『土と岩石』(東海大学出版会 1982)をパラパラと読む。
執筆当時、群馬県の後閑小学校に勤務されていた指出芳子さんの一文が印象に残った。
過放牧や過工作、灌漑、焼畑などによって砂漠化が進行しているが、一度砂漠になった地表をもう一度土に戻すのは大変な労力と時間が必要だと分かる。

私たちは、子どものころから土遊びをし、気軽に「土」ということばに親しんできている。生活の場も土の上だし、生きるための食糧となる稲や麦も土に根をはって育つ。それにもかかわらず、土がどのようにしてできたかは、意外に知られていないのが現状である。

「土」(土壌)とは、「地球の表面を薄く覆った部分で、植物・動物・気候などさまざまな作用を受けながら生成した自然の産物である」と難しい定義がなされているが、その源は岩石である。土はどのようにして岩石からつくられるのだろうか。

岩石は地表に露出すると、まず物理的風化作用(大気・熱などのはたらきで岩石が破砕される作用)を受け細かくくだかれる。さらに化学的風化作用(溶解・加水分解・酸化・還元などの作用)を受け、しだいに岩石が変質し、細かい砂や粘土の集まりとなる。これらの風化生成物はまだ土としての特徴をそなえていない。

地表や風化生成物には、最初に養分をほとんど必要としない地衣類や苔類などの植物が生活しはじめる。これらの植物は自ら分泌する酸によって、岩石や風化生成物を分解する。次に、これらの分泌物を栄養分として小さな植物や微生物が生活をはじめる。この小さな植物は光合成作用によって有機物を作り出し生育する。風化生成物中のこれらの遺体は微生物によって食べられ、植物の生育に必要な養分と複雑な化学組成をもった有機化合物(腐植)にかわり、腐植は風化生成物の中に残される。このようにしてできた風化生成物と腐植などの有機物とがまざったものを土(土壌)という。

また、ミミズは土の中にトンネルを掘って土を移動させたり、土を食べることにより土をたがやし、かくはんし、また有機物と土の混合をおこなったりする。土はその場所の気候の影響を強く受けながら生成する。

土は小さな土の粒子が集まって集合体となる。集合体と集合体の間にはすき間があり、その隙間に空気や水がはいりこんでいる。この空気や水があるために、植物や微生物が生活できる環境が作られる。岩石やかたい地層には、このようなすき間が少ないために、空気や水が入りこみにくく、生物の生育の場にはあまり適さない。土と岩石は同じものでありながら、ここでそれぞれのちがいが出てくる。