エンゾ早川『まちがいだらけの自転車えらび―幸福な自転車乗りになるための正しいロードバイクの買いかた』(双葉社 2008)を5分の4ほど読む。
神奈川・茅ヶ崎でロードバイクの専門ショップを経営する著者のロードバイク購入の指南術である。また革命家を自任しており、時折自転車とはあさっての方向の社会評論も含まれる。しかし、後半以降はフレームの材質やメーカーの細かい違いなどの話が延々と続くため、最後は投げ出してしまった。
著者にはロードバイクに対する強い愛情とこだわりと偏見があり、イタリアメーカーのGIOSを強く薦める一方、イタリア以外の国の製品や、日本のメーカーや小売り、顧客に対する辛口の発言は舌鋒鋭い。1人の信者と同時に9人の敵を作るような内容である。中には、出版社への行き方やパソコン使用の流儀、お得意さんのことなど、どうでもいいような話も挟まれる。
エンゾ・早川氏は、ロードレース界隈における有名人であり、レースやセッティングなどの著作も数多く上梓されている一方で、ネットではその言説や行動が絶えず批判の対象となっている。はっきりと正邪を断じる物言いと過剰なまでの自信は、日本では真っ先に叩かれる対象となりやすいのであろう。確かに、著作の内容とネット上の批判を並べてみると、ボケとツッコミが上手く噛み合った漫才のようである。
「2ちゃんねる」やまとめサイトでの見事なまでの叩かれっぷりを読んでいるうちに、著者への関心がムクムクと湧いてきた。一度お会いしてみたい畸人である。