千葉誠一監修『新教育産業──2011年版:最新データで読む産業と会社研究シリーズ』(2010 産学社)をパラパラと読む。
教育業界を目指す就活学生が手にする企業研究本である。関東圏で言えば、森塾や早稲田アカデミー、栄光ゼミナール、市進、中馬学院、湘南ゼミナールなどが取り上げられている。資本金や従業員数、売上高などの企業データだけでなく、子どもを成長させる要因やきっかけ作り、支援体制など、教育のノウハウも合わせて紹介されている。20代の若手講師や30代から40代前半くらいのエリア責任者のコメントなど、妥協を許さない進学教育への熱い思いが伝わってくる。
会社の宣伝になるので悪いことは全く書かれていないのだが、入社2年目で教室長を任せる塾などもあり、若手社員のやる気が最大限評価される成果主義が貫かれている業界である。隣の芝生は青く見えてしまうのかもしれないが、競争の中で磨かれていったであろう指導力や発想力、経営力など、現在の自分に欠けるものを日々築き上げている塾講師がうらやましく感じてしまう。
「塾が違うと文化も違う、県境を越えると塾文化が一変する」と業界内で囁かれているそうだ。大手塾であっても、校舎展開を複数の都道府県で行う場合、それぞれの地域の塾文化をどう形づくるかが重要となる。県単位の文化などとっくに崩れてしまった現代において、県境というローカルな縛りが生きているという指摘は興味深かった。
塾も学校も子どもを育てるという点では全く同じ立場に立っているので、ITの効果的な活用や若手講師の研修など、折を見て参考にしていきたい。