多摩美術大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
インテリアのカタログのような体裁で、在学生や卒業生の作品で埋め尽くされている。
1935年に東京都世田谷区上野毛に創設された多摩帝国美術学校が母体となり、1953年に絵画科・彫刻科・図案科からなる多摩美術大学が開設されている。沿革のページにわざわざ1969年学園紛争により全学封鎖と記載されている。その後1971年から八王子キャンパスへの移転が開始され、1989年には元の上野毛キャンパスに絵画学科・デザイン学科・芸術学科からなる美術学部二部が設置されている。美術学部二部は、1999年には造形表現学部と名称を変えたものの学生が集まらなかったのであろうか、来年2014年でもって学生募集停止が決定している。来年度以降は、日本画専攻・洋画専攻・版画専攻からなる絵画学科、彫刻学科、工芸学科、グラフィックデザイン学科、プロダクトデザイン専攻とテキスタイルデザイン専攻からなる生産デザイン学科、環境デザイン学科、情報デザイン学科、芸術学科と、来年上野毛キャンパスに開設予定の統合デザイン学科と演劇舞踊デザイン学科の10学科で構成される美術学部の単科大学となる。
大学の開設当初から「図案科」が設けられていたためか、デザインに重きが置かれる。昨年の入試倍率でもグラフィックデザインは10倍を超える難関である。
やはり制作の実践を根幹に据えた大学なので、文学部にありがちな美術理論や鑑賞を学ぶ芸術学科は人気がない。定員割れ状態であろうか。
また、八王子に移転を果たした後の上野毛キャンパスの有効活用のためか、理念のはっきりしないデザインや映像表現の学部を開設しており、来年度以降も看板を替えて延命を計っているが、わざわざ都心の狭いキャンパスを確保しておく必要があるのだろうか。この辺りが大学経営の脇の甘さにつながらなければよいが。
また、パンフレット冒頭の多摩美術大学の理念「自由と意力」の文章が格好良かった。
自由は最も尊いものである
ー美術は自由なる精神の所産ー
この建学の心を守る路程が
多摩美術大学の歴史である。
自由の校是は、与えられたものではなく
課せられたものなのだ
しかし意力の併起がなければ
自由は手段にすぎない
意力によって自由は生まれ
自由によって意力は育まれる
自由と意力
ひとくみの言葉は
学内に深沈として流れる美しい河である