特定秘密保護法案に関する新聞記事を読んでいたところ、社説に、ポーツマス条約においてロシアから賠償金が得られなかったことで国民の不満が高まり、東京の日比谷公園で行われた集会をきっかけに各地で騒動が起った一連の日比谷焼打事件は、日露戦争において政府が戦争の実態を隠して「連戦連勝」とアピールしたことが原因であるとの作家吉村氏の言葉を紹介していた。
政府とマスメディアの関係について調べてみたいと思い本棚を漁ったところ、学生時代に大学近くの古本で買ったと記憶している、現代ジャーナリズムを考える会・編『テロリズムと報道』(現代書館 1996)という本を見つけて駆け足で卒読した。
一連のオウム真理教事件の報道を巡って、テレビキャスターや新聞記者、弁護士たちによる過剰報道への検証と、あるべきジャーナリズムへの提言となっている。坂本弁護士一家失踪事件や松本サリン事件など警察の間違ったリーク情報に流され、他社との競争の中で犯人を仕立て上げていく過程が丁寧に分析されている。またTBSのビデオ問題についても触れられ、監督官庁の行き過ぎた指導が報道の自由をゆがめてしまったのではという危惧も出されている。
しかし、テロリズムを報道する側の倫理や使命、また人権派との微妙な距離感といった話が中心で、現在政府が進めている恣意的な認定によるテロなどの情報の永久の秘密化といったぶっとんだ内容に関するような話は全くなかった。十数年前には信じられないようなSF的世界に我々は足を踏み込んでいるということであろうか。