横浜美術大学のパンフレット(2014年度版)を読む。
1966年、目黒区碑文谷にある小中高校のトキワ松学園の創立50周年を記念して横浜の郊外に開設された、造形美術科を持つトキワ松学園女子短期大学が母体となっている。ちょうど私の実家の近くに位置しており、トキワ松学園短大の正門前をバーベルを持ちながら走った記憶がある。1995年にトキワ松学園横浜美術短期大学に校名を変更し、2010年に4年制大学に鞍替えしている。
ここ数年は定員を満たしていないものの、交通の不便な場所にありながら、定員の8割位の学生を確保しているというのはすごい。
1年次は、絵画や彫刻のA系、クラフトデザインのC系、ビジュアルデザインのV系のいずれかに所属し、2年次より絵画、彫刻、クラフト、プロダクトデザイン、テキスタイルデザイン、ビジュアルコミュニケーション、映像メディアデザイン、イラストレーションの8つのコースに分かれる。
パンフレットにロンドンパラリンピックでゴールボール日本代表として金メダルを獲得した学生の話が紹介されていた。美術というジャンルは時間や協同に左右される音楽に比べ、障碍者の方にとっても親しみやすいものなのであろう。才能ある者が集まり、切羽詰まったような時間の中で演奏会や展覧会をこなしていく音大や美大も大事であるが、基礎から丁寧に教えてくれ、じっくり作品に向き合う時間を大切にする音大や美大もまた必要であろう。ただし、就職は厳しそうなので、金に余裕がある者という限定は外せそうにないが。
学長との対談記事が掲載されていた横浜美術館の逢坂館長の次の言葉が印象に残った。「美術」という言葉を別の言葉に置き換えても使えそうな文章だ。
生きていく上で、美術が与えてくれる役割は大きい。私は学生のみなさんに、是非このことに気づいて4年間という貴重な時間を過ごしてほしいと願っています。日本は物質的に恵まれた国でありながら、先進国の中で幸せだと感じている人の割合が少ない国だと言われています。そんな中で、自分がどうすれば本当に豊かな生き方ができるのか、足もとから見つめ直そうという若者が増えてきているように感じます。生まれたときから身の回りに物や情報が溢れているが故に、逆に自分の道筋、生き方を見つけにくくなっている。しかし、そういうときにこそ、美術を通して自分のオリジナリティを模索する意義は非常に大きいと思うのです。自分の創造性を育むことは、生きていく上で必ずや糧になる能力だと思います。いい環境に身を置いて、美術を通して自分自身とじっくりと向き合う。横浜で過ごす4年間が、みなさんの将来をより豊かなものにしてくれたらと願っています。