月別アーカイブ: 2009年12月

『貧困大国ニッポン』

門倉貴史+賃金クライシス取材班『貧困大国ニッポン:2割の日本人が年収200万円以下』(宝島新書 2008)を読む。
先日読んだ、数字やグラフだらけの三浦展著『格差が遺伝する!』とは違い、こちらは100人あまりの「ワーキングプア」の体験談である。しっかりと働いても生活保護水準(06年現在、194万6040円)以下の生活を余儀なくされている「働く貧困層」が1023万人にのぼるという。

昨年派遣労働が問題になったが、派遣の仕事すらなくホームレスになったり、風俗の仕事すら無く極貧生活を強いられる20代、30代の若者の声が寄せられている。私と同じ30代半ばの人たちが貧困のスパイラルに落ち込んでいくのは看過できない問題である。

著者は貧困が「自己責任」だという無責任な論調に批判を投げかける。このままその日暮らしの貧困層が拡大してしまうとデフレスパイラルが進行し、やがては日本がメルトダウンしてしまう、そのため、まずは先進国最低レベルの「最低賃金の見直し」と、「同一価値労働同一賃金」の実現を目指すことが大切だと著者は述べる。

『子どもの貧困・格差を考える集会』

埼玉教育フォーラム主催『子どもの貧困・格差を考える集会』に参加した。
元埼玉大教授鎌倉孝夫氏は、主催者挨拶で、相対的貧困率が15.7%に達した事実を挙げ、高校授業料無償化といった対処療法的な対応は一定の評価はできるが、まだ不十分であり、教育基本法の精神を取り戻す根本的な解決が求められると述べた。

続いて、なたにや正義民主党参議院議員が壇上に上がり、政務三役の連携により、政府と与党が一体化され、より迅速、適切な政権運営が可能となったなどの国会情勢報告が長々となされた。

そして鳫咲子・早稲田大学非常勤講師の「子どもの貧困と就学援助制度=失われた教育の機会均等=」と題したが行われた。生活保護もしくはそれに準じる保護者の子弟に対する就学援助制度対象者はこの10年間で2倍、全国で7人に1人になるという。この背景にはリストラなどの就業環境の変化とひとり親家庭の増加が2大要因である。特に母子家庭の世帯平均所得は243万円であり、その4割が200万円以下の年収しかない。

就学援助制度とは、憲法第26条の「教育を受ける権利」および、教基法第4条の「奨学の措置」に基づき、学校教育法第25条・第40条「経済的理由により就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」によって制度化されている。しかし、三位一体改革によって一般財源化され市町村に委譲されてから、自治体によって運営に差が生じ、必要なところに行き届いていない現状があるという。鳫さんは、シビルミニマムを確保するために、適切な情報提供と関係者間(学校・福祉・NPO等)の連携、情報の共有を提唱する。

生活保護の概要や申請方法については、3年前の社会福祉士国家試験の際に勉強したはずなのに、記憶からすっぽり抜け落ちていた。せっかくの勉強が無駄になっている、、、。。。

『格差が遺伝する!』

三浦展『格差が遺伝する!:子どもの下流化を防ぐには』(宝島新書 2007)を読む。
首都圏に住む、小学生の子どもがいる1500人弱の母親へのインターネット調査を踏まえて、親の経済力や学歴、生活習慣などと、子どもの成績や性格との関連を分析している。

昔から「蛙の子は蛙」とあり、親と同じ生活環境の中で子どもは育まれる。著者は、数字の上からも、親の経済や文化の階層は子どもにしっかりと受け継がれていくと結論付ける。戦後経済成長の中で、「一億総中流」ということが言われたが、著者が定義づけた「下流化」(=単に所得が低いということではなく、勉強する意欲、働く意欲、生活する意欲、総じて人生全体への意欲が低い人たちのこと)に象徴される「格差」が「遺伝」している現状が証明された形だ。

そうした結論を踏まえて、著者は経済格差は如何ともし難いが、ゆとり教育で助長される文化格差は埋めなければならないと述べる。そして、学校の施設を借りた文化体験スクールなど、公立でもできる具体案を提唱する。

真にスポーツや文化、家族、自然と触れあう「ゆとり教育」を実現するためには、逆に学校の授業と宿題だけで自学自習ができるようにしなければならない。土曜日授業の復活や増えた祝日分を埋める授業日数を確保し、きちんと勉強をやらせる環境作りが、逆に真の「ゆとり」に繋がっていく方策を模索していかねばならないだろう。著者も最後に次のように述べる。

現実には、階層格差の拡大、固定化を問題視するのであれば、親の階層が低くても、親の経済的負担なしに子どもが努力次第で階層上昇できる仕組みを作るべきであり、その意味では、公立教育において実社会で役に立つ教育をすることには大きな意味があると言わねばならない。

パンフレット研究:秋草学園短期大学

秋草学園短期大学のパンフレットを読む。
西武新宿線の「新所沢」駅または「航空公園」駅から徒歩8分と、近隣の学生にとっては比較的通いやすい場所にある。2年制の幼児教育学科、3年制の地域保育学科と、文化表現学科、そして、幼児教育専攻科が設置されている。2007年に付属の保育園も設置されており、幼稚園や保育園への就職状況も良い。一方、文化表現学科は、図書館司書からウェブデザイン、医療事務まで何でもありの学科で、就職も苦労しているようだ。

パンフレット研究:群馬パース大学

群馬パース大学のパンフレットを読む。
キリスト教系の大学かと思いきや、何の関係もなく、病院や介護施設、介護支援事務所などを経営する地元の医療法人が母体となっ設置されたようである。そのため、特に介護現場で需要のある看護学科と理学療法学科の2学科からなっている。まず、1998年に看護短大が開設され、05年に4年制大学が開学し、2009年には大学院まで開学されている。
パンフレットを読む限り、一般教養が充実しているわけでなく、大学ならではのメリットはあまり感じられない。専門学校と同じような内容にも関わらず、学費が4年間で500万近い額に達する。金が余っている家庭は除いて、一生懸命勉強して公立系の専門学校に進学した方が良さそうである。