『雪国』

川端康成『雪国』(新潮文庫 1947)を読む。
学生時代に近代文学か何かの授業のテキストとして読んだ時は、ただただつまらないとしか思わなかったが、自分自身が中年にさしかかろうとする現在、少し違った感想を持つことができた。東京に妻子のある凡庸な暮らしを送る私が、トンネルという現実と幻想の世界を繋ぐ隘路を抜けると、芸者が自分をベタボレしてくれる都合の良い世界が用意されている。文学的な価値以前の、男に都合の良い官能小説を読んでいるような心地よさが残った。

『Deep Love:第1部 アユの物語』

Yoshi『Deep Love:第1部 アユの物語』(スターツ出版 2002)を読む。
犬やおばあちゃんといった純潔無垢なものに魅かれ、「オヤジ」のような汚れた存在を徹底して毛嫌いする若い女性の感性に良くも悪くも支えられている。女性向けの自意識過剰気味な「一人称漫画」を読んでいるような気分になる。

『受験生坂本ちゃん屁の河童』

ケイコ先生『受験生坂本ちゃん屁の河童』(日本テレビ 2001)を読む。
数年前に放映されていた「進ぬ!電波少年」で、お笑い芸人坂本ちゃんが東大合格を目指すという破天荒な企画において、家庭教師を勤めた東大卒の唐木恵子さんの日々の感想がまとめられている。
外に一歩も出られず、親や友人とも一切連絡を断つという苛烈な状況で半年間受験勉強に専心するのだが、結局はセンターの失敗で東大受験は叶わぬ目標となってしまった。そうした経験を通して、坂本ちゃん以上にケイコ先生自身が受験や勉強することの意味のを問い直すようになるその変遷が面白かった。ケイコ先生は参考書と問題集以外何もない部屋に「監禁」され、一切の情報を遮断されたことで、逆に少ない情報を吟味して思索を深めることができたと述べる。

「デカ王2.0」

今日出張の帰りに、お腹が空いたのでコンビニでカップ焼きそばを購入した。商品棚を見ると、「ペヤングソース焼きそば」が157円、「日清 UFO」が178円、そしてその隣に「デカ王2.0」というカップ焼きそばが198円と表示され陳列されていた。パッケージを見ると麺が2倍あるとのこと。一瞬のうちにコストパファーマンスを計算し、デカ王なるかなりの厚みのある容器を手にした。店内でお湯を注ぎ、数分後車の中で頬張った。予想以上にお腹の中で膨れ、満腹感は十二分に満たされた。後でパッケージの表書きを見ると、カロリー1133キロカロリー、脂質49.4グラムとの表示。夕食の胃に入る隙間なし。

dekaou日清デカ王 Wソース焼そばの商品情報はこちらをご覧下さい。

『キャッシュカードがあぶない』

柳田邦男『キャッシュカードがあぶない』(文藝春秋 2004)を読む。
スキミングや暗証番号の盗撮によってカードの情報が盗まれ、何千万円の損害を被ったにも関わらず、当の被害者が被害届すらだすことができない現行の金融政策や銀行のシステムに対して批判を展開する。私自身銀行や携帯の暗証番号に類推されやすい番号を使っており、我が身の危険も感じながら読んだ。しかし、現在の犯人集団はそうした番号そのものを盗み出してしまうので、もはや利用者の意識の啓蒙だけでとても防げるものではない。にも関わらず「自己責任」を盾に利用者に責任を負いかぶせる背景には、金融庁と銀行業界のなれ合い体質が指摘され得るだろう。
柳田氏の本は初めて手にしたが、読みやすい文体で好感が持てる。ただ事実を淡々と語る正統ノンフィクション調の文章は少し飽きが出てしまう。

参考サイト:盗難・偽造キャッシュカード被害者の会「ひまわり草の会」