瀬戸内寂聴『孤独を生ききる』(光文社,1991)を少しだけ読む。
主に孤独感に悩む女性向けの内容なので、ほぼ読み飛ばした。後半、「平成女の雨夜の品定め」と題して、女性以上に孤独感が強い男性を話のネタにする座談会が掲載されているが、身につまされる思いだった。さすが、ポルノ小説家と呼ばれていただけあって、性愛の描写は直截的であった。
セックスして互いにオルガスムスに到達した瞬間こそ、一体感を味わって孤独などすっかり忘れてしまうでしょう。何もかもひとつに溶けあったというオルガスムスの中から、二人の間に流れていた川が一挙に埋められたような気がして一体感は充足感と満足感を生み、感動がもたらされます。それは喜びであって、健康な人間は本能的にその瞬間を求めつづけているといっていいでしょう。
ところがその一体感と充足感は実に短い時間なのだから皮肉です。男は射精が終れば一巻の終りで、後には虚しさが残るのに、女の方はセックスの快感の余韻がいつまでも残っていて、まだ相手の体にしがみついている。男は心のどこかで、それをうっとうしいと感じている。女には男の射精の後の生理はわからないし、男は女のセックスの後の余韻をひく情緒がわからない。
