『雪国』

川端康成『雪国』(新潮文庫 1947)を読む。
学生時代に近代文学か何かの授業のテキストとして読んだ時は、ただただつまらないとしか思わなかったが、自分自身が中年にさしかかろうとする現在、少し違った感想を持つことができた。東京に妻子のある凡庸な暮らしを送る私が、トンネルという現実と幻想の世界を繋ぐ隘路を抜けると、芸者が自分をベタボレしてくれる都合の良い世界が用意されている。文学的な価値以前の、男に都合の良い官能小説を読んでいるような心地よさが残った。

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