林望『テーブルの雲』(新潮社,1993)をパラパラと読む。
ちょうど通過儀礼について教材研究をしていたので、映画『スタンド・バイ・ミー』の解説が興味を引いた。
先週、殺害事件に巻き込まれたロブ・ライナー監督の有名な作品である。主人公の男の子たちが、家出するようなかたちで川向こうの死体探し探検に出かけていく内容である。主人公のやや女性的な少年が、町のチンピラに兄から貰った帽子を奪われてしまうシーンは、大人と子どもの対立的な関係を象徴している。大人たちの抑圧は子どもの自己実現を妨げる障壁としてその前途に立ちふさがる。成長過程の大きな試練となる。
また、鉄道の鉄橋を渡っていく場面は、枕木の下に深い谷底が透けて見える恐ろしい場所である。それを渡ること自体「試練」にほかならない。少年たちの成人には、およそこういう儀式的訓練が必要で、それを民俗学の用語ではイニシエーション(年齢的通過儀礼)という。その場面で家族との絆である櫛を落とす象徴的なシーンがある。大人の男として生きていくには、家族との絆を断つ孤独が待ち受けていると著者は解説している。
