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『西ヨーロッパの自然と農業』

小林浩二『西ヨーロッパの自然と農業』(大明堂,1986)を半分ほど読む。
タイトルの通り、主に西ヨーロッパの地形や気候、植生の分析と、その地域的特色を生かした農業について言及されている。地理の専門書らしく、ヨーロッパの定義から始まっている。2億5000万前〜3億年前にかけて、それぞれ独立したシベリア大陸とバルティカ大陸が衝突してできた褶曲山脈であるウラル造山帯の以西がヨーロッパである。

ただし、冷戦の頃に刊行された本なので、東ヨーロッパがすっぽりと抜けている。また、EC時代の共通農業政策(CAP)などを読むと、地誌というよりも世界史の参考書のようである。
地中海式農業というと、ブドウやオリーブばかりに注目が行きがちであるが、ヒツジやヤギの飼育も古代から行われていた。特に羊毛や生乳などは衣料やチーズに加工され、農村部の貴重な産業となっていた。しかし、当時は放し飼いが中心であったため、森林破壊や土壌侵蝕に繋がった点も銘記しておきたい。

平地の少ないノルウェーでも牧畜が盛んで、古くからフィヨルドの斜面を巧みに利用した移牧による乳牛が飼育されてきた。
オランダの河口部が海面よりも低くなっている原因としては、地盤沈下していることと、偏西風の影響によって砂丘が内陸部へ移動したことがあげられる。この地域の地盤沈下の速度は過去1万年の間に20m、つまり100年につき20cm沈下したことになる。また、偏西風による砂丘の移動は、過去1500年の間に3kmも内陸部へ移動している。