月別アーカイブ: 2022年11月

『末期ガンになったIT社長からの手紙』

藤田憲一『末期ガンになったIT社長からの手紙』(幻冬舎 2006)をパラパラと読む。
タイトルそのままで、末期の胃がんが再発し、余命3ヶ月と宣告された著者が、自身の仕事や結婚の問題を赤裸々に語る。「夜明け前が一番暗い」の言葉を信じて、入院中も仕事をこなし、5年ぶりの休みを貰ったと趣味に満喫する姿は、同じ病に苦しむ患者に希望を与えるものであろう。
2006年6月に刊行された本だが、同年10月に永眠されている。展開を無視して書き連ねた内容でかなり読みにくいが、その分だけ著者の切迫した状況が伝わってくる。

抗ガン剤は基本的にガンを殺す薬ではありません。ガンと通常の細胞を薬は判別できないからです。ガンは通常の細胞より早く分裂して増殖します。ですので、抗ガン剤は分裂の早い細胞を殺すのです。したがって、抗ガン剤はガン細胞以外の分裂の早い白血球や毛髪などの正常な細胞も殺します。白血球を殺すことにより免疫力を下げることになり、感染症などで死んだりという副作用が起きます。

『クルマ・20世紀のトップランナー』

星野芳郎『クルマ・20世紀のトップランナー』(岩波ジュニア新書 1987)をパラパラと読む。
1894年にパリ郊外で行われた125kmを走る自動車レースには、ガソリン自動車が14台、蒸気自動車が6台、電気自動車が4台出場している。当時から鉛蓄電池を搭載した電気自動車がかなり走っていたという事実に驚いた。

また、イギリスの競馬には国王陛下、女王陛下が参列する。それは中世では馬が戦争の勝敗を決めたことに由来する。日本だと競馬はしばしば品位の低いもののように受け取られるが、ヨーロッパではきわめて品位の高いものとなっている。

非常に急なカーブのことをヘアピンカーブというが、それは女性が髪に挿すピンの頭のところの曲がり具合が非常にきついことに由来する。

最後の章で、著者は車がリビングルームであり、個人がくつろぐ空間となっていることを認めつつも、車が居住地内部に入ってこられないようにした上で、徒歩圏内で日常の用が済むようなコンパクトシティのあり方も提案している。

「闇の武器コネクション」

本日の東京新聞朝刊に北朝鮮がロシアに弾薬や戦闘服を渡しているとの記事が掲載されていた。2006年以降、北朝鮮は安保理決議に基づく制裁措置によって、食料や医療品、生活で必要なエネルギーなどの例外を除いて、輸出も輸入も禁じられている。

記事は旧ソ連時代の話が中心だが、ロシアの資源マネーが北朝鮮に流れ込んでいるのは見過ごすことのできない問題である。昨今の北朝鮮のミサイル発射は無視すべき問題であると考えている。迎撃システムやら敵基地攻撃能力などの過剰な反応は、米国・日本の防衛産業や国防族議員の財布を潤すだけである。日本国民を守ると声高に喧伝しながら、日本国民に犠牲を強いるものである。

一方で、周辺国が協力して北朝鮮の経済封鎖を貫徹することが求められる。記事によると北朝鮮とロシアを結ぶ貨物列車で軍需物質が送られている可能性が高いという。地図帳で示すと下図の場所である。安保理決議に基づいて貨物列車の中身を監視することが一番の近道である。繰り返すが、日本が取るべき方策は、敵基地攻撃能力を強化することではなく、安保理決議に基づいて北朝鮮とロシアの国境を監視することである。

「大谷翔平の球を打つより難しい」

本日の東京新聞朝刊にイギリス発祥のクリケットが特集されていた。 記事にもある通り、日本では競技人口4,000人しかいないマイナー競技である。しかし、インドやオーストラリアなどでは根強い人気がある。

下図は2016年の共通テストでも出題されたイギリス連邦加盟国の一覧地図である。4年に1度開催されるクリケットのワールドカップの開催国の一覧と重ね合わせると、クリケットがかつてのイギリスの植民地で人気を博していることがわかる。

1975 イングランド
1979  イングランド
1983  イングランド
1987  インド パキスタン
1992  オーストラリア ニュージーランド
1996  インド パキスタン スリランカ
1999  イングランド スコットランド アイルランド オランダ
2003  南アフリカ共和国 ジンバブエ ケニア
2007  西インド諸島
2011  インド スリランカ バングラデシュ
2015  オーストラリア ニュージーランド
2019  イングランド ウェールズ
2023  インド

「ジャワ島地震 断層横ずれか」

本日の東京新聞夕刊に、インドネシアのジャワ島西ジャワ州で起きた地震の続報が掲載されていた。地震の規模を示すマグニチュードは5.6だが、建物の崩壊や道路の寸断など大規模な災害となっている。

地震は大きく、海溝型地震・直下型地震(内陸型地震)の2つのタイプに分けられる。海溝型地震は主にプレート同士が狭まる境界で発生する。大陸プレートと海洋プレートの衝突具合にによっていくつかのタイプがあるが、地震の規模を示すマグニチュードが8を超える巨大地震となることも多い。東日本大震災ではマグニチュード9.0の地震が発生している。また海溝型地震の大半は海の中で起きるため津波が発生することもある。

一方、直下型地震は大陸プレートのひずみによって蓄えられたエネルギーが陸地の下まで伝わり、プレートの弱い部分「活断層」が破壊されることによって起きる地震のことである。海溝型地震と比べると、直下型地震はマグニチュードが小さくなるため、被害範囲も20~30km程度の地域に限られる。しかし、人の住んでいる下など、近い場所が震源となることが多いため、エネルギーが衰えずに地表まで伝わる。津波こそ心配ないが、特に浅いところが震源となった場合には、建物や家具の倒壊によって深刻な被害を起こす。また、直下型は地震の前触れがなく、突然大きな揺れとなり、10秒ほどの短時間に、縦に突き上げるような、猛烈なゆれが起こることが特徴である。

記事によると、今回の地震は活断層が水平方向に横ずれして発生したとのこと。電気やガス、水道などのインフラが破壊された可能性が高い。震源域となったチアンジュール県は首都のジャカルタと州都のバンドンの中間地域にあり、比較的支援体制は整いやすいであろうか。

インドネシアは人口2億8000万人の6割が、国土の7%しかないジャワ島に集中している、極めて歪な都市となっている。今回震源となった西ジャワ州は首都のジャカルタに隣接しており、5000万人の人口を数える。日本と同様に地震の多い国であるため、インドネシア政府の復旧・復興対策に期待したい。