江戸川乱歩『透明怪人』(ポプラ社 1964)を読む。
1951年、月刊娯楽雑誌「少年」に連載された小説で、今は聞き慣れない単語が登場する。「牛肉屋」「洋服地」「ルンペン」「焼けビル」「兵営のあと」など、高度経済成長ともに消えていった言葉である。
怪人二十面相シリーズなので、変装とトリックだらけで読後感が悪い。タイトルにある通り透明な人間が登場したかと思えば、それらは全てトリックか演技か虚言であり、最後は明智小五郎本人と替え玉と怪人二十面相が化けた明智小五郎の3人が一堂に会する。家族ですら見分けられないほどの変装っぷりはミステリーとしては邪道である。