本日の東京新聞朝刊に、ロシアがフィンランドへの電力と天然ガスの供給を停止すると発表したとの記事が掲載されていました。1学期の一番最初の授業の中で、今回のウクライナ戦争の背景にある、ロシアの天然ガスに依存する欧州のエネルギー政策について話しました。地球温暖化を食い止めるパリ協定が施行される中で、欧州はエネルギーとして石炭を利用することを止め、二酸化炭素の排出が少ない天然ガスの割合を増やしています。下掲しましたが、フィンランドもNorthern Lightsパイプラインを経由して、しっかりとロシアから天然ガスを輸入しています。
記事では触れていませんが、フィンランドはロシアからの電力や天然ガスの供給が止まった際は、いったいどのようなエネルギー政策の転換をはかるのでしょうか。記事では隣国のスェーデンからの輸入を増やすとしていますが、スウェーデンは森林や鉄鉱石、水力こそ恵まれていますが、原油も天然ガスもほとんど産出しません。
ここで自然地理学の知識を活用してみたいと思います。フィンランドはユーラシアプレートのほぼ中央に位置し、10億年以上前からほぼ変わらない、極めて安定した岩盤の上に位置しています。地理用語ではこうした地形を「安定陸塊」と言います。安定陸塊ではプレートの辺縁の歪みの影響を受けないため、全くと言って良いほど地震が発生しません。
そのため、フィンランドでは地震に弱い原子力発電所が元気に稼働しており、国内電力の10%を担っています。地政学的にフィンランドは、原子力発電にますます頼っていくことでしょう。