本日の東京新聞朝刊に、欧州連合が軍事侵攻を続けるロシアへの経済措置として、ロシア産石油を年末までに段階的に原則輸入禁止とする制裁案を発表した。
このEUの石油禁輸措置を受けて、WTI原油先物市場の価格が急上昇している。(下段チャート)
原油を100%輸入に頼る日本にとって、原油価格の高騰は生活費に直結することである。ここ2ヶ月ほど、太平洋戦争中の「鬼畜米英」ならぬプーチン政権憎しのムードが高揚し、軍事予算が倍増し、物価が高騰しているにもかかわらず、日本はプーチン包囲網の反露協調路線を突き進むだけである。
また、ハンガリーとスロヴァキアの両国は、来年以降もロシア産石油の輸入を続けると報じられている。両国ともかつては社会主義国であり、旧ソ連と緊密な関係にあった。現在でもロシアからウクライナを経由して、原油を輸送するドルジバパイプラインが通っている。(下段地図)
両国とも内陸国であり、一人当たりのGNIは1万6,000ドル程度で、ロシア産以外の原油の供給は、技術的にも経済的にも対応は難しい。
授業でも触れたが、原油も天然ガスもトラックや列車で運ぶことができない。そのため、海に面した国は海沿いに石油精製工場を建設せざるを得ない。ちなみに、日本も同じで1960年代(昭和30年代前半)までは石炭で稼働する内陸の工場があったが、1970年代から海に面した太平洋ベルト地帯に工場が重化学工業の工場が集中することとなった。
EUがいくらロシア産石油の輸入禁止というポーズを見せたところで、プーチン政権を追い込むところまではいかないであろう。岸田政権もいたずらに反ロシアのムードに流されることなく、国民生活に直結する安定した資源の確保に努めるべきである。