井野川潔『アークライト 紡績機:産業革命から原子力へ』(けやき書房 1984)を読む。
小学生を対象とした、水力紡績機を発明したアークライトの偉人伝のような内容だ。1732年に生まれたアークライトの生い立ちはちょうど、イギリス産業革命の発展と重なっており、インドや糸紡ぎ作業をローラー式にしたジョン・ケイの飛び杼や、複数の紡錘を組み合わせたハーグリーブスの妻の名を冠したジェニー紡績機、飛び杼を足踏み式で機械化したカートライトの力織機などの流れを受けて、アークライトは水力紡績機を発明することになる。クロンプトンのミュール紡績機はアークライトの紡績機のオプションと考えると分かりやすい。
そして時代は、ワットの蒸気機関と結びついて飛躍的に発展していく。アークライトの水力紡績機は職人の手作業の技術を無用のものとした。簡単な整備だけでどんどん布ができていくので、工場で児童が働く光景が一般的なものとなった点も忘れてはならないだろう。