月別アーカイブ: 2022年5月

「米、ASEAN支援強化」

本日の東京新聞朝刊より。
地理総合の授業で1秒でさらっと触れた東南アジア諸国連合(ASEAN)に関する記事である。
ASEANはもともと1967年に東南アジアの中心であるシンガポール(ハブ空港で扱いました)を中心に、周辺のインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの5カ国で発足した地域共同体である。現在ではさらに周縁のベトナム、カンボジア、ラオス、ブルネイ、ミャンマーの5カ国が参加し、東ティモールを除く東南アジア10カ国が参加している。世界第4位の2億7000万人の人口を抱えるインドネシアが含まれているので、ASEAN全体で日本の5倍の6億5000万人の人口を数え、中国、インドに次ぐ巨大市場となっている。

授業では触れることができなかったが、マレー半島のマラッカ海峡が含まれており、地政学的には重要な位置を占めている地域でもある。ここ数年、米中対立がエスカレートする中で、中国だけでなく米国もASEANへの擦り寄りを示している。南シナ海の不安定な情勢と絡めて、経済だけでなく、米英豪、日米豪印の軍事同盟や国際政治といった点を意識すると、教科書の太文字ゴシックの用語もキラキラと輝いて見えますよ。

「フィンランド 中立転換」

本日の授業で紹介した、フィンランドとスェーデンの2カ国が米国・英国が中心の「北大西洋条約機構(NATO)」への加盟を意思表示した、との記事が東京新聞朝刊に掲載されていた。

改めて外務省のホームページでフィンランドについて調べてみた。国土面積は、33.8万平方キロメートル(日本よりやや小さい)で、人口は約551万人(2018年12月末時点)となっており、小国ながら日本よりもゆったりとした環境である。

EUに加盟しており、一人当たりGDPは49,845ドル(2018年,IMF)となっており、日本よりも高額だが、GDPに対して社会保障費が30.9%を占める高負担福祉国家のため、日本よりも生活実感は低いかもしれない。

第二次大戦中の2回にわたるソ連との戦争経験を踏まえ、冷戦時代以降も、西側にも東側にも与しない中立政策をとっていたが、今回のNATO加盟は、フィンランド外交の大元から変わるものである。ムーミンやサンタクロースの平和的なイメージが揺らいでしまう。

「原材料高騰 暮らしに直撃」

本日の東京新聞朝刊記事より。
値上げが止まらない。オリーブオイルは、夏に乾燥する地中海性気候に属するスペインやギリシア、イタリアで生産されている。またサラダ油の原料は大豆であり、アメリカやブラジルが生産量のトップを占める。また、日清キャノーラ&アマニ油に含まれるアマニ油はカザフスタンとロシアで生産されている。

また、円安や水産資源の減少、物流コストの上昇を背景に、「回転寿司=100円」という値段の常識が崩れようとしている。このうち水産資源の減少については、温暖化による漁場の変化などもあるが、日本のEEZ内外の水産資源が周辺諸国に脅かされているという現実が突きつけられている。授業の中で北方四島、竹島、尖閣諸島について、日本の領土意識や水産資源という観点から説明した。

ホッケや、サケ、タラ、カレイなどの寒海性魚類は寒流の影響を受けるので、北方四島の影響は免れない。また、

回転寿司が好きな生徒の皆さんは、

『アークライト 紡績機』

井野川潔『アークライト 紡績機:産業革命から原子力へ』(けやき書房 1984)を読む。
小学生を対象とした、水力紡績機を発明したアークライトの偉人伝のような内容だ。1732年に生まれたアークライトの生い立ちはちょうど、イギリス産業革命の発展と重なっており、インドや糸紡ぎ作業をローラー式にしたジョン・ケイの飛び杼や、複数の紡錘を組み合わせたハーグリーブスの妻の名を冠したジェニー紡績機、飛び杼を足踏み式で機械化したカートライトの力織機などの流れを受けて、アークライトは水力紡績機を発明することになる。クロンプトンのミュール紡績機はアークライトの紡績機のオプションと考えると分かりやすい。

そして時代は、ワットの蒸気機関と結びついて飛躍的に発展していく。アークライトの水力紡績機は職人の手作業の技術を無用のものとした。簡単な整備だけでどんどん布ができていくので、工場で児童が働く光景が一般的なものとなった点も忘れてはならないだろう。

「英領北アイルランド議会選 シン・フェイン第1党へ」

本日の東京新聞朝刊記事より。
北アイルランド議会選挙で、アイルランドとの統一を目指すシン・フェイン党が第1党になったという記事が掲載されていた。私は高校・浪人時代は世界史選択であった。「怒った(1905年)我らのシン・フェイン党」という語呂合わせで、イングランドに抵抗するアイルランド政党の成立年号を口ずさんでいたことを今でも覚えている。

そのシン・フェイン党が北アイルランドで第1党になったということは、United Kingdomの解体が始まったということだ。EU離脱後の経済の混乱に加え、ジョンソン首相に対する批判が重なったようだ。

確認しておくと、私たち日本人がイギリスと呼んでいる国は、United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandといい、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国と訳される。グレート・ブリテン島(東側の島)にあり、ロンドンを含むイングランドと西側のウェールズ、北側のスコットランドの3つの国と、アイルランド島の北側の北アイルランドを合わせた4つの連合王国がいわゆるイギリスである。サッカーが好きな生徒は、ワールドカップにイギリスという国は存在せず、それぞれバラバラにトーナメントに出場するのは知っているであろうか。

1922年に北アイルランドを併合して以来、ちょうど100年目の今年、北アイルランドが独立、アイルランドとの統一を目指すという流れ興味深い。ブレグジット(EU離脱)に伴い、スコットランドも独立へと動いており、UK(連合王国)の動向について、授業の中でも触れておきたい。