日別アーカイブ: 2021年9月5日

『キューバ自転車横断紀行』

小林健一『キューバ自転車横断紀行』(彩流社 2014)を半分ほど読む。
1946年生まれの著者が、タイトル通り自転車で23日間約1000kmの道のりを自転車で横断する旅行記である。著者は「輪行」に関する著書も出版しており、冒険記というよりも、普段通りの自転車海外旅行の詳細をレポートしている。

私好みのうってつけのテーマなのだが、淡々と話が進んでいくため、途中で飽きてしまった。キューバは北緯22度付近にあり、貿易風を背に東に進むと追い風をいつも受けるとか、ベネズエラと関係が深いのでガソリンが安いとか、ソ連崩壊後砂糖産業が崩壊したとか、面白い話はたくさんあるのに、著者自身にしか分からない舌足らずなエピソードが続くのでギブアップ。

それでも、キューバを取り巻く社会主義国の腐敗とラテン系なノリの生活スタイルの奇妙な調和の雰囲気は伝わってきた。

『地図を楽しもう』

山岡光治『地図を楽しもう』(岩波ジュニア新書 2008)を読む。
国土地理院で測量・地図技術の仕事に従事してきた著者が、行基図から伊能忠敬の測量技術、紙に立体を表現する際の細かいテクニックなど、かなりマニアックな内容を分かりやすく語る。

1942年の2万5000分の1の地形図には、「回」の字をかたどった回教寺院(モスク)の地図記号があったと知った。また、日本の詳細な地図を作成する上で三角点の持つ重要な意味を語るのだが、1990年以降は三角点から電子基準点へと変わっている。三角点は動かない前提なので、地図作成の基準となったのだが、電子基準点は地殻変動や地震予知の研究などに有効利用され、常に動いている大地を観測するものになっている。三角点から電子基準点へと正統に進化する中で、その果たす役割が180度逆転しているというのは面白い。

「トルコへのアフガン難民増」

本日の東京新聞朝刊に、アフガニスタンの難民がトルコやパキスタンの砂漠地帯を抜けてトルコへと流れ着いているとの報道があった。すでにトルコには30万人ものアフガン難民を抱えている中で、トルコの東部の国境近くの町に数多くの難民が押し寄せているとのことである。

地理の労働力の移動という視点で考えていくと、就労や生活の場を求めて一人当たりのGNIが高い国へと難民は移動していく。トルコは人口8400万人おり、一人当たりのGDPは8600ドルとなっている。中央アジア・西アジアで一番の経済大国である。ちなみにイランは同4200ドル、パキスタンの一人当たりGNIは約1500ドルとなっている。アフガニスタン難民がイランやパキスタンではなく、トルコを目指すのも頷ける。

GNIとGDPは厳密に言うと計算方法が異なるのだが、地理では一緒くたに考えてよい。

「ミャンマー国軍支援強化 ロシアが武器供与」

本日の東京新聞に、ミャンマーの軍事政権に対して、中国だけでなくロシアも支援を強化しているとの記事が掲載されていた。ミャンマーは、「一帯一路経済圏構想」を掲げる中国の貿易権拡張政策の重要地域となっている。中国は人口爆発が進むアフリカへの進出を強めている。そのため、イギリスの影響が強いマラッカ海峡を経ずに、インド洋へ直接進出できるミャンマーを支配下に治めようと躍起になっている。

一方、ロシアにとって、ミャンマーは地政学的にさほど重要な国ではない。それでも武器供与を行うということは、記事にもある通り、中国やパキスタンとの軍事同盟の絆の補強を狙ったものであると解釈できる。コロナで世界があたふたしている中で、インド洋周辺を巡って、英米印豪vs中露パの対立がいよいよきな臭くなっている。