山岡光治『地図を楽しもう』(岩波ジュニア新書 2008)を読む。
国土地理院で測量・地図技術の仕事に従事してきた著者が、行基図から伊能忠敬の測量技術、紙に立体を表現する際の細かいテクニックなど、かなりマニアックな内容を分かりやすく語る。
1942年の2万5000分の1の地形図には、「回」の字をかたどった回教寺院(モスク)の地図記号があったと知った。また、日本の詳細な地図を作成する上で三角点の持つ重要な意味を語るのだが、1990年以降は三角点から電子基準点へと変わっている。三角点は動かない前提なので、地図作成の基準となったのだが、電子基準点は地殻変動や地震予知の研究などに有効利用され、常に動いている大地を観測するものになっている。三角点から電子基準点へと正統に進化する中で、その果たす役割が180度逆転しているというのは面白い。