月別アーカイブ: 2020年7月

「石炭火力の輸出」

本日の東京新聞朝刊の社説に、石炭火力発電輸出に疑問を投げかける社説が掲載されていた。環境面だけを考えれば、石炭発電よりも環境負荷の小さい天然ガス発電や再生可能エネルギーにシフトせよという主張は十分に理解できる。しかし、東南アジアやアフリカの後発発展途上国の現状を考えると、石炭火力も選択肢の一つに組み入れざるを得ないのではないかと思う。

少し解説を加えてみたい。中東やロシア、北アフリカや南米の一部といった産出地域が限られ、供給が不安定な天然ガスに比べ、石炭は広範な地域で産出され、地政学的なリスクが低い。そのため、2018年度の日本の石炭火力の発電量は全体の32%程度に上る。液化天然ガス(LNG)火力の38%程度に次ぐ規模となっている。

そうした中で、今月2日に、日本政府は二酸化炭素を多く排出する非効率な石炭火力発電所を2030年度までに段階的に休廃止すると発表した。なかなかの英断だと評価する向きもあったが、高効率の石炭発電所の新設や、石炭発電の輸出計画も合わせて発表され、パリ協定を蔑ろにするとの批判も出ている。東京新聞の社説もそうした意見に与したものとなっている。

私も再生可能エネルギーの研究・開発に重きを置き、それまでは天然ガスのコンバインドサイクル発電を活用していくべきであると考える。しかし天然ガスは中国やロシアがしのぎを削って採掘に力を注いでおり、天然ガスに頼るということは、米中、米露の政治対立に巻き込まれやしないかと不安を感じてしまう。北極海や南シナ海の緊張を考慮すると、国際政治や軍事衝突に巻き込まれなくて済む石炭火力を、もうちょっとだけ延命させても良いと思う。

原子力発電の是非も含め、エネルギー問題は3学期の授業の中で、一緒に考えていきたいテーマです。

「米、中国5社利用の企業排除」

本日の東京新聞朝刊に、スマホやサーバーを通じて中国に情報や技術が流出されていると、米国政府が中国企業5社の製品やサービスを使う企業を排除すると発表したとの記事が掲載されていた。

地理の授業でも触れたが、ここ数年の米中貿易問題の大きな課題が、この先端技術や特許技術の中国の盗用疑惑である。特に華為技術(ファーウェイ)は、元中国人民解放軍所属の軍事技術関係者が深圳に創業した企業であり、中国公安部や軍との緊密な関係が疑われている。

「一帯一路」経済圏構想に基づき、世界第1位の大国を狙う中国との付き合い方は、国や企業だけでなく、日本人一人ひとりの懸案事項ともなっている。紀末後の授業では東南アジア、南アジアと入っていくが、中国の問題に何度も触れることとなるであろう。

『そこからすべては始まるのだから』

香山リカ『そこからすべては始まるのだから:大震災を経て、いま』(メディアファクトリー 2011)を読む。
些細な人間関係での悩みや、尽きない物欲、他人と比べての自分に対する不安などが、震災を機に露わになり、そこからの変化を素直に受け入れようと述べる。内容自体は分かりやすかったのだが、何かの新聞か雑誌に書いたものを採り集めたのだろうか、同じような話が繰り返され、後半は飽きてしまった。

22インチ女の子用自転車

茨城で貰ってきた自転車である。綺麗だったので、ほぼそのまま売った。
しかし、大雨が続く天候だったためか、買い手が付かず、5000円で売るはずが、2500円となってしまった。



『テレビに映る中国の97%は嘘である』

小林史憲『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社+α新書 2014)を読む。
著者はテレビ東京の報道局の特派員で、4年半の中国取材の中で21回も当局に拘束された経験を持つ。その著者が体当たりで取材した、「反日デモ」の実態や中国一の金持ち村と言われた華西村、賄賂に使われる茅台酒(マオタイ)、青海省のチベット族の暮らし、毒餃子の犯人が生まれた村、中朝国境付近の様子の6章立てで構成されている。どの話も実際の現場の雰囲気が伝わってきて面白かった。やはり海外事情に関する本は、その国の全体を表している訳ではなく、個人の主観に左右されてしまうが、実際の取材や体験を元にした内容の方が良い。

特に、社会主義の中国の方が、農業の企業化が進み、大規模農業で社員として働く制度が出来ているという話が興味深かった。日本よりも資本主義的なやり方が導入されている。また、以下の戸籍に関する話では、江戸時代の「帰農令」や映画『翔んで埼玉』を思い出させる。

中国には厳格な戸籍制度がある。市や村単位で細かく分類され、基本的には、自分が生まれた自治体でしか、行政サービスを受けられない。出稼ぎ先に長く住んでも、そこでの公共サービスや社会保障は与えられないのだ。しかも、親の戸籍によって子供の戸籍も決まってしまう。
特に悪名高いのが、「都市戸籍」と「農村戸籍」の分類である。都市戸籍のほうが、社会福祉や公共サービス、就職などで圧倒的に有利なのだ。ちなみに、日本への観光ビザの取得においても、戸籍は可否を決める大きな要因である。北京市や上海市など、大都市の戸籍であれば、信用されて条件が甘くなるが、農村戸籍だと、保証人や財産証明などの審査が厳しくなる。