日別アーカイブ: 2020年7月25日

「バイカル湖生態系危機」

本日の東京新聞夕刊より。
こちらも生徒の発表で紹介されたロシアのバイカル湖である。バイカル湖はの湖水面積は約31,500km2で、琵琶湖の47倍にも及ぶ。最大水深は1700mで、その水量は地表の淡水の2割を占めるという。

ちなみに、地球上には13億8485万km3の水量があるが、そのうちの97.4%は海水である。残り2.6%の淡水3598.7万kmのうち、76.4%は南極やグリーンランドなどの氷河で、22.8%は地下水となっている。つまり、それらを除いた地表の湖水や河川水などを合わせても、淡水全体の0.8%に過ぎない。ざっと計算すると28.8万km3である。バイカル湖にはそのうちの2割、つまり6万km3の水量を湛えていることになる。

水深200mで太陽の光は水面の0.1%となるので、バイカル湖は世界でも珍しい淡水の深海魚が数多く棲息している。「ロシアのガラパゴス島」の異称もあり、1996年に世界遺産に登録されている。このバイカル湖周辺で自然保護区域の指定が解除され、森林伐採が激化するというのが記事の内容である。

シベリア鉄道は日本でも人気のツアーとなっており、ロシア国内のことに日本人がとやかくケチを付ける問題ではない。しかし、世界の共通遺産なので、何かしらの枠組みで対応することはできないのであろうか。

「イラン旅客機に米軍2機が接近」

本日の東京新聞朝刊に、民間旅客機に米軍の戦闘機が接近し、多数の怪我人が出たとの記事が掲載されていた。しかし、記事を読んでも、米国とイランの政治関係が理解できていないと、なぜ米国がイランに悪事を働くのか分からないであろう。

イランは第2次大戦後、英国企業や米国政府の支援を受けて石油開発を行ってきた。当時のイラン・パフレヴィー朝の国王だったパフレヴィー2世(在1941〜1979)は、米国の意のままに動く人物で、西欧との資源外交を重視するあまり、国民に犠牲を強要する独裁者であった。さすがに国内から反対の声が高まり、1979年にイスラム教の教えに帰るイラン革命が起こった。パフレヴィー2世は米国に亡命し、イラン国内の石油関連施設はすべてイランが接収することとなった。その際に米国大使館員を1年以上にわたって人質とする事件まで起きている。また、翌年1980年には米国側も報復に打って出て、隣国イラクに武器を供与し、イラン・イラク戦争まで誘発している。

他にも書きたいことがあるが、続きは後日。

「アヤソフィアで初の金曜礼拝」

本日の東京新聞朝刊より。
1学期のプレゼンでトルコについて発表した班があり、記事にあるアヤソフィアを取り上げていた。アヤソフィアとはトルコのかつての首都イスタンブールにある世界遺産である。記事の最後にもあるが、ビザンツ帝国時代にギリシャ正教会の総本山として建築され、オスマン帝国征服後は、イスラム教のモスクに改築されている。第一次世界大戦後にオスマン帝国が滅亡すると、後を継いだトルコ共和国では、ヨーロッパとの関係修復を狙い、宗教色を排した博物館と位置付けられてきた建物だ。

現トルコ政権を担うエルドアン大統領は、タカ派的発言を繰り返すことで、一部の国粋主義者の人気を集めてきた人物である。数年前からシリアとの国境付近に滞在するクルド人を掃討しようとシリア国内にまで進攻し、数多くのシリア難民を生み出す結果を招いた。しかし、トルコ国内ではシリア難民をもう受け入れられないと、シリア本国への強制帰還やEUに押し付けるなどの排外主義的政策が目立つようになってきた。

人口8,200万人の大国トルコが、EUとも中東とも距離を取ろうとする中で、人口の大半を占めるイスラム教の一部の支持者を喜ばせる政策の一つが、このアヤソフィアの「モスク化」である。周辺の国に挑発を繰り返す一方で、国内で愛国主義を扇動する手法は、戦前の日本と同じである。親日国で知られる同国が危険な道に進まないことを願う。

『人生ベストテン』

角田光代『人生ベストテン』(講談社 2005)を読む。
2003年か2004年にかけて「小説現代」に連載された短編集である。同じ2005年に「対岸の彼女」で直木賞を受賞してから初の作品となっている。話の内容はどこにでもあるような日常風景なのだが、そこで暮らす登場人物の過去への後悔や現在への不満、未来への不安などが多様に織り込まれ、読むのに疲れる作品であった。純文学を読んでいるような緊張感があった。