『テレビに映る中国の97%は嘘である』

小林史憲『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社+α新書 2014)を読む。
著者はテレビ東京の報道局の特派員で、4年半の中国取材の中で21回も当局に拘束された経験を持つ。その著者が体当たりで取材した、「反日デモ」の実態や中国一の金持ち村と言われた華西村、賄賂に使われる茅台酒(マオタイ)、青海省のチベット族の暮らし、毒餃子の犯人が生まれた村、中朝国境付近の様子の6章立てで構成されている。どの話も実際の現場の雰囲気が伝わってきて面白かった。やはり海外事情に関する本は、その国の全体を表している訳ではなく、個人の主観に左右されてしまうが、実際の取材や体験を元にした内容の方が良い。

特に、社会主義の中国の方が、農業の企業化が進み、大規模農業で社員として働く制度が出来ているという話が興味深かった。日本よりも資本主義的なやり方が導入されている。また、以下の戸籍に関する話では、江戸時代の「帰農令」や映画『翔んで埼玉』を思い出させる。

中国には厳格な戸籍制度がある。市や村単位で細かく分類され、基本的には、自分が生まれた自治体でしか、行政サービスを受けられない。出稼ぎ先に長く住んでも、そこでの公共サービスや社会保障は与えられないのだ。しかも、親の戸籍によって子供の戸籍も決まってしまう。
特に悪名高いのが、「都市戸籍」と「農村戸籍」の分類である。都市戸籍のほうが、社会福祉や公共サービス、就職などで圧倒的に有利なのだ。ちなみに、日本への観光ビザの取得においても、戸籍は可否を決める大きな要因である。北京市や上海市など、大都市の戸籍であれば、信用されて条件が甘くなるが、農村戸籍だと、保証人や財産証明などの審査が厳しくなる。