下田翔太原作、高橋慶執筆、toi8イラスト『消滅都市』(PHP研究所 2015)を読む。
スマートフォン用に配信されているゲームアプリの世界のノベライズである。登場人物について読者が分かっている前提で話が展開していくので、展開の省略が多すぎて、物語の世界観そのものが理解できなかった。
月別アーカイブ: 2019年12月
「ソマリアで爆弾テロ」
本日の東京新聞朝刊に、「アフリカの角」と呼ばれたアフリカ東部のソマリアの政情に関する記事が掲載されていた。ソマリアはアフガニスタンやイラク、シリアなどの中東諸国とよく似ている。両国とも、19世紀から20世紀前半にかけては、ヨーロッパ列強の帝国のご都合主義により、宗教や民族を無視して勝手に国境が引かれ、冷戦の時には社会主義で旧ソ連の影響を受ける。そして、冷戦後は国境も経済もボロボロになったところに、部族同士の争いやイスラム原理主義が台頭し、さらに米国のお節介外交により、米国の武器を国内に多数滞留し、国内政治がぐちゃぐちゃにされてしまう。
ソマリア内戦に介入した米軍を描いた『ブラックホーク・ダウン』(2001 米)という映画がある。アカデミー賞も受賞したので、ネットで検索すれば出てくる。冒頭、国連の援助物資すら安全に届けられないシーンが今も印象に残っている。
2009年から現在まで、日本はソマリア海沖の海賊対策として海上自衛隊を派遣している。スエズ運河や紅海を航行する船の安全を守ろうと、ソマリアに隣接するジブチを拠点に活動を継続している。これはソマリア政府の要請による国連安保理決議に基づくものだが、安保理では海賊を押さえ込むために、海上だけでなく、陸上や空の監視も決めており、自衛隊が巻き込まれる可能性は否定できない。
宗教や部族が絡んだ内戦は、他国が安易に関わると余計に問題を悪化させる。日本政府は自衛隊の活動を、航行の安全確保を目指す国連平和維持活動に限定するべきである。
「国連制裁の船 拘留せず」
本日の東京新聞朝刊に、国連安保理で制裁されている北朝鮮の石炭密輸に関する記事が掲載されていた。詳細は記事に譲るが、北朝鮮国内には、石炭だけでなく、鉄鉱石や燐灰石、マグネサイト、ウランなど、200種類を超える有用鉱物が確認されている。また、近年とみに価値が高まっている希少金属のタングステン、ニッケル、モリブデン、マンガン、コバルト、チタニウムなども豊富との情報がある。こうした鉱物資源が北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源となっているとのことで、国連決議が発動されている。
地理的に言えば、朝鮮半島は安定陸塊に属している。安定陸塊とはまだ植物が地上に繁茂する前の先カンブリア時代からほとんど変わらない地域である。そのため鉱産資源が発掘しやすい。石炭は植物由来のため、植物が地上で栄枯盛衰を繰り返した6億年前から2億5千年前に造山運動で形成された古期造山帯に多く見られる。北朝鮮は安定陸塊に位置しながら、石炭が偏在する地域となっている。
北緯38度線を挟んだ一方の韓国は、同じ安定陸塊にありながら、日本と同様にほとんど鉱産資源に恵まれない。そのため、原材料を輸入し、製品として輸出する加工貿易を産業の中心としてきた。
資源に恵まれた国であるがゆえに、私腹を肥した独裁政権が蔓延る例は、中東やアフリカ諸国でも散見される。生まれつきの財産や身分、美貌に恵まれても必ずしも成功しない人間に擬えることができるだろうか。
『アンドロギュノス』
安賽泰史『アンドロギュノス』(幻冬舎メディアコンサルティング 2016)を読む。
幻冬舎サイドに編集者が介在した自費出版という形なのか。
タイトルにもある通り、処女懐胎したマリアを両性具有者として捉え、現代において両性具有者が出産をするというモチーフで話が展開していく。新奇なモチーフに囚われすぎたのか、後半は筆の勢いに任せるのみで、前半と話が噛み合っていない箇所が幾つもあり、読者が置いてけぼりにされる。
宣伝文句に騙された感が残る。
『火山のはなし』
下鶴大輔『火山のはなし:災害軽減に向けて』(朝倉書店 2000)を読む。
東京大学の地震研究所教授や気象庁の火山噴火予知連絡会の会長職を歴任した著者が、学生や自治体の防災担当者向けに分かりやすく、火山の仕組みと過去の火山噴火の状況、火山噴火の防災の実践などについて語る。
長年火山に魅せられてきた著者だけに、火山災害以上に火山の魅力が行間から感じられる。著者は次のようなセリフで火山の素晴らしさを伝える。
The most spectacular and dynamic
phenomena of Nature are
Aurora in the Heaven
and
Volcanic Eruptions on the Planet Earth