本日の東京新聞夕刊に、ファスナーで知られるYKKグループがブラジルの自社農園で栽培したコーヒー豆を使い、国内でカフェを運営しているとの記事が掲載されていた。
同社では「他人の利益を図らなければ自らも栄えない」とする創業者の経営哲学に基づき、ブラジル進出で得た利益を現地での地域貢献に生かそうと、農場経営と農場で働く人の生活環境の向上に取り組んでいる。
その中心的役割を果たした同社の八木さんは、土地が痩せていたため、コーヒー栽培の前に大豆を植え、牛を飼育し、有機物を土に混ぜて土壌改良を進めたとのこと。この点について少し解説を加えたい。
そもそも、ブラジルの大半はは安定陸塊に属し、古い玄武岩が風化した粘土質のテラローシャや、赤道付近は鉄やアルミニウムが残留した赤土のラトソルといった痩せた土壌に覆われており、農業には不向きな土地である。
しかし、大豆の根には窒素をアンモニアに変換する根粒菌(バクテリアの一種)が共生し、植物が育つための微生物環境を醸成する機能がある。それに畜産を加えることで、植物に最適な土壌を作るというのは、ヨーロッパの混合農業の手法である。日本では火山噴出物からなる鹿児島県・シラス台地で、同じようにマメ科の作物と畜産を加えた農業が普及している。
八木さんの実戦は農業の基本に沿ったものとなっている。現在では年間60トンもの収穫があり、採算ベースに乗ったフェアトレードの一環として評価したい。