日別アーカイブ: 2019年12月23日

「ブラジルの恵み 現地に還元」

本日の東京新聞夕刊に、ファスナーで知られるYKKグループがブラジルの自社農園で栽培したコーヒー豆を使い、国内でカフェを運営しているとの記事が掲載されていた。

同社では「他人の利益を図らなければ自らも栄えない」とする創業者の経営哲学に基づき、ブラジル進出で得た利益を現地での地域貢献に生かそうと、農場経営と農場で働く人の生活環境の向上に取り組んでいる。

その中心的役割を果たした同社の八木さんは、土地が痩せていたため、コーヒー栽培の前に大豆を植え、牛を飼育し、有機物を土に混ぜて土壌改良を進めたとのこと。この点について少し解説を加えたい。

そもそも、ブラジルの大半はは安定陸塊に属し、古い玄武岩が風化した粘土質のテラローシャや、赤道付近は鉄やアルミニウムが残留した赤土のラトソルといった痩せた土壌に覆われており、農業には不向きな土地である。

しかし、大豆の根には窒素をアンモニアに変換する根粒菌(バクテリアの一種)が共生し、植物が育つための微生物環境を醸成する機能がある。それに畜産を加えることで、植物に最適な土壌を作るというのは、ヨーロッパの混合農業の手法である。日本では火山噴出物からなる鹿児島県・シラス台地で、同じようにマメ科の作物と畜産を加えた農業が普及している。

八木さんの実戦は農業の基本に沿ったものとなっている。現在では年間60トンもの収穫があり、採算ベースに乗ったフェアトレードの一環として評価したい。

「人口流出2割 将来に影」

本日の東京新聞朝刊に、1989年の東欧革命から30年を迎えたルーマニアの現状が紹介されていた。
記事によると、チャウシェスク独裁政権が倒れた後も、共産主義時代の支配層が権力を握り続け、国内経済はずっと低飛空状態が続いているとのこと。1人あたりのGNIは9,970ドルで、EUで最下位のブルガリア(7,760ドル)に次いで低い。ちなみに同じ出典データで日本は同38,550ドルである。

EU域内では単一通貨ユーロやシェンゲン協定により、人や物、金の移動に制限がないため、域内で経済力の低い国から高い国への「移民」が止まらない。ルーマニアではここ30年で人口の2割が流出している。イギリスのブレグジットもそうした東欧や中東からの移民や難民に対する社会不安が根底にある。

記事の最後に「特に医師不足は深刻だ。持続性のある分野への投資を進めるなど、若者の流出を食い止める政策が必要だ」とあるが、日本の地方の過疎化と大変似通った課題が指摘されている。工業団地の誘致や田舎暮らしの宣伝、日本ではあまり評判が良く「ふるさと納税」など、日本の事例がEUでも役立つことがあるかもしれない。