鳥越俊太郎『ニュースの職人―「真実」をどう伝えるか』(PHP新書 2001)を読む。
新聞、週刊誌、テレビと渡り歩いた著者が、どのような媒体であっても事件の裏に潜む「真実」を求め、ヤラセや脚色を避けて「誠実」に伝えるジャーナリストしての使命を語る。
「イエスの方舟事件」や「松本サリン事件」など、一斉報道により冤罪や報道被害を生みがちな雪崩現象を、ジャーナリズムの世界では「スタンピード現象」と呼ぶそうだ。鳥越氏は、赤狩りとして有名な「マッカーシズム」も過熱したマスコミが作り出した報道被害であると述べる。一方、扇動の中心者であったマッカーシー議員のインチキぶりを暴き、マッカーシズムを収束させたのも報道の側の人間であった。そのCBSのアンカーのエドワード・マローの言葉を孫引きしてみたい。
マッカーシーはまさにマスコミが作り出したものだ。彼の言葉を全国にばらまいたのはマスコミだ。デマと知りつつ、彼が言ったことはニュースだとの立場から報道を続けた。反対の立場を明確にしなかったテレビ、ラジオ、新聞、雑誌はみなマッカーシーに手を貸した。アメリカ国民に対してだけでなく、自己の誇りを汚したことに対しても彼らは責任を負うべきだ
鳥越氏はこのエドワード・マローの言葉を「報道に関わる者への警告」だとし、ジャーナリズムは社会正義の実現に努めるべきだとまとめる。
今日の新聞を見ていても、共謀罪や、南シナ海への自衛隊派遣、テレビ局に対する自民党の圧力など、きな臭いニュースが目白押しである。テレビや新聞を通じてニュースに接する私たちの目の確かさも問われている。