陰山英男『娘が東大に合格した本当の理由:高3の春、E判定から始める東大受験』(小学館101新書 2008)を読む。
「百ます計算」をはじめとする読み書き計算の徹底反復と、「早寝早起き朝ごはん」の標語で知られる生活改善の指導で子供たちの学力を驚異的に伸ばした「陰山メソッド」で知られる著者の娘の東大合格体験記である。
前半は著者の父から見た娘の成長や努力、自身の教育観や家族論、後半は娘の視点で東大受験にまつわる心模様が綴られている。東大合格と言っても、一浪しての合格であり、特別「○○メソッド」と言ったような指導や学習法が載っているわけではない。家族一緒に過ごす時間を大切にし、食生活や睡眠のリズムを整え、頭を活性化させる環境を作ることが大切だという。
陰山氏は子どもの学力について次のように述べる。
さて、たくましい脳の活力はどのように知識となり、学力として形成されていくのであろうか。私はそのカギが言語にあると思っている。私の理解では、実は計算も数の世界での言語だ。
要は、ある種の事象を具体的に数値や言語によって記号化し、抽象化する。それを脳の中で組み立て、分析していく。この作業が学習だと言ってよいだろう。とするならば、言語を通じて活力ある脳が鍛えられていく最も中心的な学習は何か。
それは読書である。私は読書なき子ども達の学力向上などありえないと思ってきた。
陰山氏は、上記のような考えのもと、常に子ども達が本に触れるような読書家庭環境や、カルタ遊び、図書館通いなどを提唱する。
また、同じような内容なのだが、別の章では次のようにまとめている。公私ともども参考にしてみたい。
私は娘の東大受験を総括氏、その必然性を考えてみた。そして思う。東大合格の鍵となるのは、脳の高度な情報処理能力である。そしてありがたいことに、この情報処理能力は意図的に伸ばすことができる。
そのために第一に必要なのは、生活習慣である。その意義は、脳そのものを元気に成長させることにある。その要点をまとめていう言葉が、早寝早起き朝ごはんである。規則的な生活習慣の中で、ゆっくり寝ることで、脳の成長の時間を確保し、しっかり栄養のある朝食を食べることで、脳がもっとも働く時間にしっかりと働かせることだ。
次に必要なのは知的な環境と働きかけである。勉強は、するのとさせられるのでは、その本質は大きく違う。もちろん教師はさせるのだが、それをあたかも子どもが自分からしたかのように演出するのが腕の見せ所であり、親も実は同じである。
その導きが大きく影響するのが、読書習慣の確立である。読書習慣の確立は、知的環境作りが大きく影響する。毎日の読書時間作りや読書スペースの確保、本が読みたくなる本棚、そして何より読みたくなる本の準備、こうしたことを意図的にやらなければいけない。