本日の東京新聞朝刊に、中国の「一人っ子政策」全廃に関する特集記事が掲載されていた。身につまされるような話だったので、全文引用してみたい。この話は決して他所の国の過去の政策として済まされる話ではないと思う。他山の石としたい。
中国当局は、長年続けた「一人っ子政策」の全面廃止を決めたが、既に二人目以降を出産した親が罰金が払えないために「黒孩子」(闇の子)と呼ばれる無戸籍層に恩恵はない。二人の娘を持つ北京市の母親(41)が苦悩を吐露した。
九歳の長女と六歳の次女がいます。次女は戸籍がありません。中国では何をするにも「市民身分証」のカードが必要です。身分証のない次女は飛行機にも乗れず、医療保険もない。このままでは将来、普通の就職もできません。
二人目の妊娠がわかった時、中絶するか悩んだ末に産みました。北京市に届け出ると、平均年収の六年分の二十四万元(約四百五十万円)を社会扶養費(罰金)として請求されました。家財道具を売って払おうと考えましたが、ネットで調べたら、一人っ子政策に抗議して異議申し立てをする親がいると知りました。
彼らと交流するうちに、「自分は国策に逆らった」と洗脳されていたことに気づきました。子どもを産むことは天から授けられた権利。それがなぜ罪なのか。国が権利を奪うことはできない。私たちも異議申し立てをしました。
次女は三歳のころ、自分に戸籍がないことに気づきました。でも身分証は買えると思っているようで、缶に小銭を入れて貯金もしています。私がつい「もうじき身分証がもらえるよ」と言ってしまったことがあります。娘は興奮して喜び、「(身分証の)写真を撮る時、これを着るの」と洋服も用意しています。いたたまれない気持ちになります。
政府は以前、「無戸籍の子どもは千三百万人」と発表しました。実際はその何倍もいるでしょう。中国では、役人は一人っ子政策を徹底しないと出世できません。地方では罰金を払わない家庭の家財道具を押収したり、暴力を加えていると聞きます。北京に住む私たちは恵まれている方です。
「黒孩子」という言葉には抵抗がありますが、まだ我慢できます。でも「超生的」(余分の子)という言葉もあり、それは許せない。子どもはみんな宝物。余分な子なんていません!
一人っ子政策の廃止は遅すぎました。既に多くの家庭が罰金を払っている以上、私たちの罰金もなくならない。戸籍がなくとも義務教育は受けられるので、次女も小学校に通っています。でも高校、大学は無理。いずれ罰金を払うことも考えています。
姉妹が仲良く遊ぶ姿を見ると、本当に幸せを感じます。周りの人に「二人目を産んで後悔していない?」と尋ねられます。でも夫といつも話すんです。「あの時、中絶していたら、こんなかわいい子と出会えなかった。その方がずっと後悔していただろうね」って。
中国では一人っ子政策を突き進めた結果、親が一人の子どもに財力をつぎ込む生活様式に変わり、条件のよい進学、就職のために幼稚園選びから競争が始まるというギスギスした雰囲気が蔓延するようになった。無戸籍層は公式統計では国内で1300万人に達すると言われるが、二人目を産んで罰金が払えずに国外へ移住せざるを得ない例もかつてあったように思う。中国の内政問題ではなく、外交問題だと言ってもよい側面がある。
人口が多いからと抑制し、今度は一転人口が増えないからと緩和策に踏み切ったわけだが、日本の猫の目政策とも重なるところが多い。
今後とも影響を及ぼす問題であり、注目していきたい。
一人っ子性格
中国が人口抑制策として1979年に導入。違反者から高額の罰金徴収や拘束、強制中絶などの措置を取ってきた。この結果、昨年の0歳~14歳人口は全体の16.5%(世界平均27%)に。2013年には夫婦の一方が一人っ子の場合、2人目を認める緩和策を始めたが、出生数は大きく伸びなかった。政策緩和は来年から。