月別アーカイブ: 2015年4月

『吉田自転車』

吉田戦車『吉田自転車』(講談社 2002)を読む。
漫画家吉田戦車さんの2001年9月12日から、2002年2月11日まで「Web現代」に掲載された同名コラムの単行本である。
近所の三鷹や調布、仙川界隈を愛車ナイスバイク号で走りながら、友人との飲み食いや自転車だからこそ見えてくる風景や土地柄について綴っている。
「自転車」というタイトルであるが、後半は自転車についての記述はすっかり鳴りを潜め、どうでもいい作者の日常生活の話ばかりが続くので、あまり気乗りしなかった。吉田戦車さんの漫画が好きなファンであれば、作者の人柄がよく伝わってくるので楽しく読める作品であろう。

『大人の東京お散歩マップ』

梶原有紀子『大人の東京お散歩マップ』(廣済堂出版 2003)をパラッパラッと読む。
2001年4月から2002年12月まで、読売新聞夕刊に連載された、東京各地の町歩きイラスト入り情報がまとめられている。
銀座や原宿、自由が丘のようなおしゃれな町だけでなく、茗荷谷や高円寺、経堂といった少しマニアックな町から、森下や新井薬師前、小田急相模原などのかなりマニアックな町まで、50余りの町のオススメお散歩コースや美味しいお店がふんだんに紹介されている。

『新教育産業』

千葉誠一監修『新教育産業──2011年版:最新データで読む産業と会社研究シリーズ』(2010 産学社)をパラパラと読む。
教育業界を目指す就活学生が手にする企業研究本である。関東圏で言えば、森塾や早稲田アカデミー、栄光ゼミナール、市進、中馬学院、湘南ゼミナールなどが取り上げられている。資本金や従業員数、売上高などの企業データだけでなく、子どもを成長させる要因やきっかけ作り、支援体制など、教育のノウハウも合わせて紹介されている。20代の若手講師や30代から40代前半くらいのエリア責任者のコメントなど、妥協を許さない進学教育への熱い思いが伝わってくる。
会社の宣伝になるので悪いことは全く書かれていないのだが、入社2年目で教室長を任せる塾などもあり、若手社員のやる気が最大限評価される成果主義が貫かれている業界である。隣の芝生は青く見えてしまうのかもしれないが、競争の中で磨かれていったであろう指導力や発想力、経営力など、現在の自分に欠けるものを日々築き上げている塾講師がうらやましく感じてしまう。
「塾が違うと文化も違う、県境を越えると塾文化が一変する」と業界内で囁かれているそうだ。大手塾であっても、校舎展開を複数の都道府県で行う場合、それぞれの地域の塾文化をどう形づくるかが重要となる。県単位の文化などとっくに崩れてしまった現代において、県境というローカルな縛りが生きているという指摘は興味深かった。
塾も学校も子どもを育てるという点では全く同じ立場に立っているので、ITの効果的な活用や若手講師の研修など、折を見て参考にしていきたい。

『サイクリング・エクササイズ』

順天堂大学教授・青木純一郎監修『サイクリング・エクササイズ:サイクリングを科学するエクササイズ・ブック』 (1996 大泉書店)を読む。
自転車の種類や構造、パーツの機能から、サイクリンググッズやウェア、雑誌や大会の情報など、自転車についての多岐に渡る情報が見開き1ページでコンパクトにまとめられている。
少々古い本で、現在では存在しないものやと名称が異なるところが多々あったが、自転車と健康の関係について理解することができた。
週3日のサイクリングで有酸素運動を無理なく継続することで、高血圧の改善、動脈硬化・糖尿病の予防、ストレス解消、肥満対策、心肺機能の向上、脳の活性化による老化防止など、成人病予防に劇的な効果を発揮すると書かれている。
一昨日、新しいクロスバイクを注文したばかりだったので、頭の中で、大会に参加したり、河原を走っている自分の姿がリアルに浮かんできた。

『やった。』

坂本達『やった。:4年3カ月も有給休暇をもらって世界一周5万5000キロを自転車で走ってきちゃった男』(MIKIHOUSE 2001)を読む。
長い副題にある通り、執筆当時ミキハウスの入社4年目の20代の社員でありながら、4年3ヶ月の有給休暇を貰い、自転車で世界一周した男の冒険記である。ヨーロッパ、ジブラルタル海峡からアフリカを縦断して喜望峰まで、イスタンブールユーラシア大陸を横断し、ブータンを経てハノイまで、アンカレッジから南北アメリカ大陸を縦断して、アルゼンチンの最南端ウシュアイアまでと、小説やテレビの冒険バラエティ番組に出てくるような破天荒な世界一周旅行である。バイクで大陸横断という本は何冊か読んだ気がするが、自転車で世界一周という内容の本を読んだのは初めてだ。しかし、自転車ならではのエピソードは少なく、また旅行の全日程が紹介されているわけでもない。文化も生き方も異なる世界各地の人々との温かい交流がひたすら綴られる。自転車で旅をするコツが知りたいと思い手に取ったので、やや期待とは違ったが、教科書や地図帳を見ても分からない異国の人々の思いやりや気遣いなどが知れて良かった。
あとがきの中で、坂本氏は次のように語る。

 僕にとって、走ることは手段であって目的ではなかった。世界の人たちがどのように生き、何を感じ、考えているのかを肌で知りたかったのだ。また一方で、会社員としてやったこの世界一周は、僕自身がこの先どうやって生きていくのか、生きていけるのかを試す旅でもあった。そういう意味で目的が果たせ、今とても満足している。

ホームページを見ると、坂本氏は現在でもミキハウスの社員として勤務する傍ら、自身が4年3ヶ月の間に感じた感謝を伝える講演会活動を行っている。冒険家とも旅行作家とも違う、一途な人柄が伝わってくる生き方である。

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Link:TATSU SAKAMOTO’S BIKE TRIP AROUND THE WORLD